まさに天災は忘れたころにやってくる。14日夜、最大震度7の揺れが、熊本県を中心に九州中部を襲った。東日本大震災から5年。次は首都直下か、南海トラフかなどといわれていたときに、大地震は九州で起きた▼亡くなった方のご冥福と負傷者の早期回復、そして倒壊した家屋やインフラの、一日も早い立て直しを願うばかりだ。そう思っていた矢先の16日未明、再び強い揺れが熊本を襲った。余震かと思いきや、こちらが本震だと気象庁は述べている▼最初の地震が起きたのが午後9時半ごろ。本震は夜中である。もし季節が少し早ければ、暖房器具からの出火もあっただろう。風が強ければ、小さな火が大火事を招いていたかもしれない▼条件が違っていれば、今以上の被害があったことは容易に想像できる。比較的大きな余震が今も続く。雨の季節も近づいている。災害に備えるには、想像力を働かせ、さまざまな想定を立てることも重要である▼これは想像というよりも、妄想や空想に近い。地震の直後「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマがまた流れた。もちろん、何者かが意図的に拡散させたものである▼今時、どれだけの人がこれを信じるだろうか。思慮の浅い差別主義者とレッテルを貼られるだけだと、なぜ想像できないのか▼想像力を働かせてほしい。虚報とわかっていつつ、こうした情報があれば、本来救助などにあたるべき人々の手が、調査に割かれかねないことを。差別的な考えを持つのは勝手だが、他人に迷惑だけはかけないでもらいたい。