北韓が開発を続ける大量破壊兵器

核兵器だけではない 生物・化学兵器の脅威
日付: 2016年04月06日 10時09分

1960年代から開発 保有量はロシア、米国に次ぐ3位

 北韓が開発を続ける大量破壊兵器といえば核ミサイルだ。だが、北韓では長らく生物・化学兵器の開発が行われてきたことも事実だ。少量でも大量の人命を奪う生物・化学兵器は、核兵器の陰に隠れがちだが、対南攻撃を想定した場合には有力な選択肢になるだろう。その脅威について、ジャーナリストの金泌材氏がまとめている。
 人口約1000万人のソウル市。その半数を死に至らしめるために必要な核兵器は2・6メガトン。広島・長崎型の100倍以上だ。それに比べ、生物兵器はより少量で人命を奪うことができる。サリンガスなら2・25キロ、炭疽菌は17キロだ。
 非常に強い毒性を持つボツリヌス毒素なら、100グラムをソウル上空で散布するだけで、数十万人が苦悶しながら死ぬとみられている。散布は無人機で行える。
 2014年、北韓製とみられる無人機が韓国内で墜落しているのが見つかったのは記憶に新しい。中にはデジタルカメラを搭載した機体もあり、大統領府が撮影されていたことは小さからぬ衝撃を韓国民に与えた。
 韓国側は無人機の侵入に気づかなかった。もし北韓がその気になれば、カメラの代わりに毒薬と散布機を乗せ、無人機による大量殺人が行えるのだ。
 ミサイルや放射砲、はては迫撃砲でも、北からの生物・化学兵器攻撃は可能だ。現在、北韓が保有している野砲の約30%、ミサイルの50%は、生物・化学弾を装填して発射できるように準備されているという。砲弾1発に、約40万人の致死量に相当するサリンが搭載できるという。放射砲1門で一度に20発以上のロケットを発射できる。放射砲は100門を超える。
 北韓での開発が始まったのは1960年代といわれる。金日成が61年、「毒ガスや細菌は、戦時に効果を発揮できる」という教示を出してからだ。80年代からは本格的な生産が始まり、生物・化学兵器による攻撃能力を備えたとみられる。
 2002年には姜錫柱・外務第1次官(当時)が、訪朝したジェームズ・ケリー大統領特使に「核兵器よりも強力な武器」を保持していると述べた。当時は水素爆弾のことを指しているとみられていたが、化学兵器だったという説もある。化学兵器は、姜・ケリー会談のころには最前線に配備されていたと国防大学のチョン・ビョンホ博士は分析している。
 韓国生命工学研究院が2011年に発刊した資料によると、北韓はボツリヌス毒素だけでなく、炭疽菌、腸チフス、赤痢、コレラ、ペストなど、13種の菌体を保有している。化学兵器の保有量では、ロシアと米国に次ぐ3位の5000トンと評価されている。戦時になれば、1万トン以上にまで増産することも可能だという。

北の核技術「中国企業が…」 米高官が指摘

 米国務省のトーマス・カントリーマン国際安全保障非拡散担当次官補は1日、核安全保障サミットが開かれているワシントンで記者会見に応じ、北韓の非核化のために改めて中国の役割が重要だと述べた。カントリーマン次官補は、海外から集められる北韓の核技術は、ほとんどが中国経由で入っていると指摘した。
 カントリーマン次官補によると、核技術の流入には中国企業が介在していることが多いという。米中は3月に採択された国連安保理制裁に基づき、貿易管理の面で積極的に協力しているという。だがカントリーマン次官補は、韓半島の非核化のためには、中国が決断を行動に移すかが重要になってくると強調した。


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