瞻星臺=編集余話

日付: 2016年03月30日 00時32分

 「線路はつづくよ どこまでも」。北海道新幹線の開通で、北海道から九州までが新幹線でつながった。26日の営業開始をどれだけ多くの人が待ち望んだことだろう▼「野をこえ 山こえ 谷こえて」。野山や谷どころではない。新幹線が通る青函トンネルは、鉄道用トンネルとしては世界最長を誇り、海底を掘り進めるという難工事の末に完成した。今から28年前のことだが、当時から新幹線が走ることを前提に作られた▼それだけの難工事である。トンネル開通までに幾多の事故があった。34人の命が失われたことは、折に触れて報じられているので、ご存知の方も多かろう▼実はこの歌、米国の民謡がベースになっている。大陸横断鉄道の工事に携わった労働者の歌だ。歌詞は、今の日本で親しまれている楽しいものとはだいぶ違う▼「線路の仕事」という邦題がつけられている。「線路の仕事は いつまでも 線路の仕事は はてがない」。1955年の訳だ。当時は鉄道の工事のイメージには、この歌詞の方があっていたのだろうか▼今でこそ鉄道工事で死者が出るようなことは減ったが、線路は引いて終わりではない。保守点検は、特に冬の北海道では、つらい作業になる。過去に安全管理面の不祥事が連続したJR北海道には、汚名返上を期してもらいたい▼予約の不調が聞こえ、年間50億円弱の赤字が見込まれている。それでも新幹線は走る。誰かの夢を乗せ、「はるかな町まで ぼくたちの たのしい旅の夢 つないでる」。


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