制裁に悩める北韓に、救いの手を差し伸べている国がある。ロシアだ。国連制裁を回避するため、中国企業を絡めた偽装取引も報じられている。ロシア産の原油を、中国企業が買ったように見せかけて搬出し、北韓に運び込むという密貿易だ。
ロシアは人権侵害に対する国際社会からの批判でも、北韓に「助け舟」を出している。朝露は2月、ロシア内にいる脱北者の強制送還についても合意した。ロシア内には外貨稼ぎのための北韓労働者がいる。山間部での伐採作業や建設作業など、集団作業になるため監視の目は厳しいが、どうにか逃げ出して韓国行きを求める人が年間数千人単位でいたという。
両国の合意後、ロシアはモスクワにあった国連人権高等弁務官事務所を閉鎖。国連側は事務所閉鎖と強制送還を思いとどまるよう説得したが、ロシア側は応じなかった。
ロシアと北韓が関係を深めているのはなぜか。まずロシアにとっては、中国の撤退で生じた空白に入り込み、労少なくして成果を得られるというメリットがある。代表的な事例は北韓東北端に位置する羅津港だ。原油の密輸も羅津港を舞台にしている。ロシアから運び出された原油が、同港で所有権放棄の手続きを経て北韓に入っているという。
ロシアは沿海州からの貨物を、不凍港である羅津から韓国などに向けて輸出するプロジェクトを進めていた。現在は制裁のため正常に稼動しているとはいいがたい状況だが、北韓との貿易を制限している中国にかわり、羅津での貿易の土台を維持したいという考えがあると専門家は指摘する。北韓の主な貿易拠点は半島西北端の新義州だったが、羅津の存在感は、ロシアの関与に比例して高まるだろう。
北韓にしてみれば、自らを擁護してくれるのであれば、どの国でも歓迎だ。複数の国と密接な関係を築くことで、外交上の選択肢も広がるといえる。