対北制裁の抜け道

米国との交渉の糸口を探る北
日付: 2016年03月16日 08時25分

 国連安保理の対北制裁決議が採択されて10日ほど過ぎた。今回の制裁は、かつてないレベルの内容になったといわれるが、加盟国がどこまで制裁を履行するかが効力を左右する。その代表が、対北貿易で最大のウエイトを占める中国だ。

浦項沖で石炭の荷卸しを待つ中国籍の貨物船(14年11月撮影)

 現在のところ中国は、制裁を履行しているように映る。中朝国境地帯の最西端に位置する遼寧省丹東市は、鴨緑江を隔てて北韓の新義州と接している。鴨緑江にかかる中朝友誼橋は、中朝貿易の大動脈といわれるが、3日の制裁発動以降、往来する貨物の量は激減したと伝えられている。中国側からは原油などが、北韓からは鉱物などが禁輸とされたためだ。北韓船籍の貨物船が、中国の港で入港禁止となっているという報道もある。
 だが、北韓の外貨収入は断たれたわけではなく、抜け穴もある。その一つが、輸出品目別で鉱物性燃料に次ぐ2位となっている衣類とその付属品の輸出だ。北韓製の衣類は日本にも輸出されている。といっても日本は独自の制裁で北韓との貿易を禁じている。そのためタグは中国製とされているが、仕立てのほとんどを北韓で行うやり方が主流になっている。
 国外での労働も制裁の対象にならなかった。北韓は東南アジアや中東に労働者を派遣し、労働対価を得ているが、その多くは労働者個人のものにはならない。北韓の外貨稼ぎに利用されるだけだ。
 ただ、制裁はやはり効力を発揮している。韓国の専門家は、3月に入って北韓が核・ミサイル能力を誇示しているのがその表れだと指摘する。
 北韓の狙いは、米国との平和協定を結ぶことだ。韓国との緊張を高め、米国も刺激すれば、米国との交渉に臨めると考えている。こう専門家は分析している。仲介役は中国だ。今は制裁に動いている中国が、いずれ対話局面を造成するという見方である。
 南北韓とロシアが行う共同事業「羅津ハサン・プロジェクト」も全面的な中断となる。ロシアからの物資を北韓との国境に近いハサンに集め、北韓にある不凍港の羅津港まで貨物列車で運び、そこから船で物資を輸出するプロジェクトだ。これは韓国独自の制裁に基づくもので、開城工団閉鎖に続く北の外貨獲得源遮断措置といえる。


閉じる