今年に入ってから続いている北韓の挑発が、ついに核ミサイルの事実上の実戦配備宣言に及んだ。北韓は1月に「水爆実験」を敢行し、2月には米本土に届くという大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実験した。3月に入ってからは、核を用いた先制攻撃で威嚇し、その核弾頭の小型化・軽量化に成功したと強調している。
北側が公開した一連の写真には、小型化・軽量化したという核弾頭と、組み立てられたICBM「KN‐08」まで写っていた。
金正恩は「核爆弾を軽量化して弾道ミサイル搭載できるよう標準化、規格化を実現した」と、核科学技術者たちをねぎらった。さらに、米国に核の先制攻撃ができるよう、ミサイルの増産を督励した。
北側は国連の制裁にあえて挑戦し、韓国内の原発や港湾などを具体的に想定した弾道ミサイル発射訓練まで公開した。
金正恩は一触即発の危機感を煽っている。最高権力者がこういう光景を演ずるのは前代未聞のことだ。
韓国国防部は、北韓の発表に懐疑的な見方を示したが、これは穏当な態度でない。北側が3月10日に発射したのは韓国全土を射程に収めるスカッドミサイルだった。核弾頭も十分搭載できるものと判断すべきであろう。
米国防省も公式には北側の主張に疑問を表しているが、米軍内には北韓の能力に警戒すべきだとの主張が強い。北米航空宇宙防衛司令部のゴートニー司令官は10日、「今日の時点で(北が)核兵器を小型化し、ICBMに搭載する能力を持っていると仮定するのが、現場の司令官として賢明な判断だ」と述べた。当然のことだ。
韓国国防部の姿勢はあまりにも安逸で国民を不安にする。北の核武装の野望が明確になってから25年以上も経った。今まで韓国政府は米国や国連などに訴えてきたが、ほかに有効な対策を立ててきたのかを問われれば、答えに窮するだろう。特に、決して韓国の戦略的パートナーにはなりえない中国共産党に期待してきた安保の失敗は致命的だ。
「初の核実験からの期間などを考慮すると、小型化の技術をある程度は確保しているのではないか」と述べた統一部報道官の方がむしろ真っ当な反応だ。安保専門家たちはみな、「最悪の状況を想定して備えるのが当然の対応だ」と指摘している。
北が立て続けに挑発するのは、米国との「平和協定」締結協商を強いるためという見方も少なくない。米国と平壌側が「平和協商」に入ればそれこそ韓国は最悪の状況になる。
軍事・外交的に絶体絶命の危機にさらされた韓国が、中国に翻弄されながら韓米連合訓練にばかり頼る姿勢を見せるのは情けない。韓国は今こそ国運をかけて攻勢に出なければならない。