57%から90%へ。北韓が1回目の核実験を敢行した06年、北韓の海外貿易に占める中国の割合は57%にすぎなかった。しかし、2回目の核実験があった09年には79%に増え、2014年には、北韓の対中貿易は、全貿易量の90%を超えた。
北韓が核実験を行うたびに、国際社会は北韓に制裁を加え、中国も参加した。しかし、北韓の対中交易シェアは大きくなっていった。中国が北韓への制裁を実質的に履行していなかったことを示す統計だ。
米上院は10日(現地時間)、いわゆる「セカンダリー・ボイコット」を含む新たな制裁案を本会議で通過させた。北韓だけでなく、北韓と取引をする第三国や個人も対象に含まれるというもので、2012年に施行した対イラン制裁を北韓にも適用する形だ。新年に入って4回目の核実験と大陸間長距離弾道ミサイル発射実験を相次いで敢行した北韓に対する全方位的な制裁、一言でいえば「北韓の資金源遮断」に突入したのだ。
「セカンダリー・ボイコット」の制裁対象には、北韓と貿易をする中国企業も該当する。米国のジョン・ケリー国務長官は1月27日、北京を訪問し、王毅外相と4時間にわたって会談。その席でケリー長官は中朝貿易への制裁に言及し、中国の協力を要請した。
北韓にとって対中貿易は、体制の命綱となっているのが実情だ。韓国貿易投資振興公社によると、2014年の時点で、北韓の対中輸出入規模は68億ドル。北韓の貿易全体の90%を占めている。生活に必要な消費財から石油、食糧に至るまで、経済全体が事実上中国との貿易に依存しているといっても過言ではない。
ワシントンの民間団体、戦略国際問題研究所のボニー・グレーザー上級研究員は最近、米下院が主管した聴聞会で「中国は北韓が必要な原油の70%と消費財の80%、食料の45%を提供している」と明らかにした。世界全体では対北直接投資の95%を中国が占めている。
中朝貿易から得る北韓の主な収入源は、鉱物の輸出だ。中国税関総署の「2015年度中朝交易」の統計資料によると、北韓の最大輸出品目である無煙炭と鉄鉱石の輸出額はそれぞれ10億4900万ドル、7200万ドルを記録した。昨年、開城工団を通じて北韓に支払われた現金が約1億2000万ドルだったのと比べると、北韓はこの2種類の鉱物を中国に売って韓国から得る額の10倍以上の外貨を手にしたことになる。
鉱物の輸出額は全体の貿易額の60%水準にあたる。残りは衣類と水産物で約30%、その他10%となっている。
ソウル大学経済学部の金炳椽教授は、新東亜1月号のインタビューで、「北韓と貿易している中国企業180社を調査した結果、中朝貿易では売上高の7%に相当するキックバックが発生する」と述べた。金教授は大統領直属の統一準備委員会の民間委員であり、北韓経済の専門家でもある。金教授によると、多い年はキックバックだけで4000億ウォン相当の外貨が北韓に入ったと推定されている。
北韓の別の外貨稼ぎの手段としては、中国やロシア、中東、東南アジア、アフリカなど約20カ国に労働者を派遣する人材派遣事業がある。中国に限ってみてみると、観光政策の主務省庁である国家旅遊局が統計をまとめており、昨年1年間で就職を目的として中国に入国した北韓住民は9万4000人にのぼる。
これまで北韓が数多くの制裁を受けてきたのに耐えられる理由の一つが、海外に派遣した労働者を通じたドル稼ぎだ。彼らが稼ぐ外貨の規模や、北韓政権が収奪する”上納金”の規模は、確認できていない。韓国情報当局は、少なくとも年間3億ドル以上にはなると試算している。
中国は北韓に莫大な支援をしているのだが、その中でも中朝貿易の統計に表れないものがある。原油(石油)だ。統計では「0」と表記されているが、中国は北韓に無償あるいは借款の形で原油を提供してきた。昨年も中国は、過去と同水準となる最低50万トンの原油を北韓に提供したことがわかっている。
今年は、北韓が1回目の核実験を敢行してからちょうど10年目となる。その間明らかになったのは、さまざまな対北制裁が施行されたが、中国が存在する限りその実効性は乏しいということだ。10年間で2倍に増えた中朝貿易の規模が、それを裏付けている。中国は表面上だけではなく、真剣に対北制裁に参加するのか。これが対北制裁の成否のカギを握っている。
(ソウル=李民晧)