金正恩の資金を遮断

開城工団を閉鎖 対北政策の根本的転換
日付: 2016年02月17日 09時52分

 韓国政府は10日、開城工団の稼動を「全面中断」すると発表した。北側の4回目の核実験と長距離弾道ミサイル発射に対する制裁措置だ。北韓側は翌日、対抗措置として工団を軍事統制区域にすると声明を発表し、韓国側の物資を凍結し関係者たちを直ちに追放した。韓国側は電源の供給を停止。工団は事実上の閉鎖となった。開城の閉鎖は、韓国政府の対北政策の根本的転換だ。ただ、北の核ミサイルの実戦配備を阻止するための国家的決意が成果を出すためには、国内外的に数多くの試練と難関を乗り越えねばならない。

 韓国政府が開城工団の閉鎖を決断せざるを得なくなったのは、北の核ミサイルの実戦配備が迫ったと判断されたからだ。北側が米国も射程に入れる移動式ICBMであるKN‐08ミサイル旅団をすでに実戦配備したという情報も流れている。
 統一部の洪容杓長官は、昨年1年間で韓国から開城工団を通じて北に支払われた現金は1320億ウォン(1億2000万ドル)、04年からの累計は6160億ウォンだと発表した。洪長官は、開城工団からのドルが北の核・ミサイル開発の資金源になっているとも指摘した。
 開城工団は2000年の金大中・金正日会談で造成が決まったもので、操業開始は2004年。南北和解・交流を象徴する経済協力事業であり、金大中政権が打ち出した「太陽政策」を具現したものだった。
 入居企業は韓国から資材を持ち込み、水道と電力も韓国から供給された。生産された商品には「Made in Korea」というタグが付いた。
 「南北経済協力」の実態には、当初から疑問の目が向けられた。特に北側労働者への賃金が、北当局を通じて支払われることは問題視された。北当局に支払われた外貨(ドル)が核兵器やミサイル開発に転用されるという指摘は当初からあった。だが、韓国の歴代政権はこの点を問題にしなかった。
 今までも南北関係に影響されて何度も操業中止はあったが、今回の稼動中断は事実上の工団閉鎖だ。それは、稼動中断の事由が核ミサイル開発資金への転用であるためだ。北側が核ミサイルを廃棄しない限り、工団の再開は不可能だ。
 北側も祖国平和統一委員会が11日の午後、開城工団の韓国人全員を追放し、企業の資産を凍結。工団を軍事統制区域にすると宣言し、韓国側との通信チャンネルも断った。韓国側も工団への電気・水道の供給を止めた。
 重要な意味を持つのは、韓国政府の対北政策が根本的に変わったという点だ。韓半島を中心とした東アジアで冷戦構図が復活している状況では、「信頼プロセス」などこれまでの「片思い的」な政策はもはや成り立たない。南北間の心理戦も金大中政権以前の状態に戻った。
 THAAD配備問題をめぐって韓中関係も変わった。韓国は中国の「平壌に対する影響力」に期待していたが、その期待も完全にしぼんだといえる。

各党の反応
 開城工業団地の操業全面中断は、韓国政府が閉鎖まで覚悟して下した対北制裁と評価される。開城工団をめぐる南北間の攻防が熾烈に展開された10日、与野党は各々論評を通じて立場を発表した。論評の要旨を紹介する。(ソウル=李民晧)

「全責任は北韓に」 セヌリ党
 セヌリ党は、政府の開城工団の全面中断決定を尊重する。北韓の挑発の悪循環を断つための避けられない措置だ。
 韓半島において北韓の核と平和は共存できない。並立は不可能だ。
 開城工団は2003年の南北交流協力と平和の象徴として造成された。しかし、北韓は開城工団を政治的人質にして大韓民国政府と韓国国民を脅かし続けてきた。大韓民国が主権国家として当然すべき軍事訓練を口実に陸路通行を一方的に遮断すると、北韓労働者を撤収させ、開城工団の稼動を中断させたこともある。
 言葉だけで対北韓制裁を叫んでいても説得力がない。私たち自らが変化しない北韓に向かって強力で断固たるメッセージを送らなければならない。北韓が核開発への未練を捨てなければ孤立を招くことを、行動で示すべきだ。

「全面的に再検討せよ」 共に民主党
 わが党は、政府の今回の措置が、最終的に開城工団の永久閉鎖につながる可能性が非常に高いという点で反対の立場を明確にし、全面的に見直すことを強く要求する。開城工団は南北和解の象徴であり、現時点では、南北間に残された最後の紐帯だ。開城工団の全面中断はまさに南北関係の全面遮断であり、交流や協力が存在しない冷戦時代への回帰を意味する。
 北韓は、2010年の5・24措置で韓国に依存する経済の枠組みから脱している。したがって、開城工団の閉鎖が北韓に対する経済的圧迫の役割を果たすには限界があるというのが専門家たちの指摘だ。むしろ、より大きな被害をこうむるのは開城工団に入居した韓国企業であり、韓国経済の対外信用度は落ちるだけだ。わが党は、政府の措置が国民の安保不安をあおる非常に不適切な措置であることを明らかにし、全面的に見直すことを重ねて促す。

「実効性なき自傷的制裁」 国民の党
 国民の党は開城工団閉鎖方針が実効性のない「自害的制裁」であり、後戻りしがたい南北関係の破綻という点で反対する。開城工団の閉鎖は、北の損失よりも北側に入居する企業の被害の方がはるかに大きい。結果的に、北への打撃よりも、韓国側の入居企業に損失をもたらすという点で、「自害的」措置にすぎない。
 政治・軍事的緊張があっても最後まで守ってきた南北関係の最後の砦を韓国政府が自ら閉めることは、南北関係の完全破綻を意味する。朴槿惠政権の任期中、南北関係にはもはや何も期待できない。
 最終的には明確な効果もなく、南北関係のマジノ線を自ら放棄したものであり、後戻りしがたい非現実的制裁だ。開城工団の閉鎖は、中国を対北制裁に引き出すためのカードとしても効果が疑わしく、私たち自らが北へのてこを放棄するような感情決起誇示にほかならない。


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