一般教書演説では北への言及なく

米の対北制裁 カギ握る中国
日付: 2016年01月20日 12時56分

 北が4回目の核実験を行ってから約1週間後の12日(現地時間)、米国のバラク・オバマ大統領は一般教書演説を行った。核弾頭の小型化により、米国にとっても北の核が脅威となりつつある今、「核なき世界」を提唱して09年にノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領の口から、どのような言葉が出るか、関係者は注目した。

最後の一般教書演説を行ったオバマ大統領

 だが、大統領として行う最後の一般教書演説は、聞く者にとって”肩透かし”といえる内容だった。オバマ大統領は、北の核に一言も触れなかったのだ。
 大統領選の指名争いが本格的にスタートしたこともあり、2016年の一般教書演説は、オバマ政権7年間の成果を強調する場面が目立った。最初に大きく取り上げたのは景気低迷からの脱却であり、続いて富の再分配や機会均等、医療保険制度、環境問題だった。
 安全保障についてオバマ大統領は、「いかに米国を安全に保ち、世界の警察官になることなく世界をリードするか」と疑問を投げかけながら構想を語った。最優先課題として、米国市民を守りテロリストを追い詰めていくことを挙げたオバマ大統領は、IS(イスラム国)の壊滅に力を入れると強調。安全保障に関するスピーチの大半をテロリスト対策に割いた。
 一般教書演説では、最後まで北韓に関する発言は聞かれなかった。上院外交委員会東アジア太平洋・国際サイバーセキュリティ政策小委員会のコリー・ガードナー委員長や、下院外交委員会のエド・ロイス委員長は、ともに核実験が演説に盛り込まれていない点を非難した。
 ロイス委員長は特に強い口調で対北圧力の強化を訴えている。同氏は地元カリフォルニア州のメディアに寄稿し、米国が北に「核放棄か滅亡か」の二者択一を迫るべきだと主張した。
 米行政府からも北に対する厳しい意見が出ている。国務省のカティーナ・アダムス東アジア太平洋担当報道官は、政府が議会と連携して対北制裁を強めていく考えをメディアとのインタビューで明らかにした。すでに下院では、北の核・ミサイル開発などに携わった個人や団体に対し、金融機関を含む米企業との取り引きを禁ずる法案が可決されている。05年に偽ドル札製造に対抗してとられたBDA(マカオの金融機関)の北関連口座凍結措置と同様、金正恩政権にダメージを与えるのが主な目的となる。

かつて制裁を受けたBDA

 ここで鍵を握るのは中国だと米国内の専門家は指摘する。BDAに対する制裁は、当時の金正日政権に大きな打撃を与えたといわれている。しかし現在はカネの流れが複雑になると同時に、中国国内の金融機関経由の取り引きも増えている。中国の協力を得られなければ、制裁に実効性を持たせるのは難しいとの声が複数の専門家から出ている。
 議会と行政府が動いているのに対し、12日の演説で北に対して沈黙したオバマ大統領のホワイトハウスは、翌日にその理由を説明した。
 「北の指導者について私が知りうることの一つは、彼が関心(を集めること)を好んでいるということだ」(ベン・ローズ国家安全保障会議副補佐官)
 大統領が北の核実験に触れなかったのは、金正恩の意図に乗らないためだったということだ。ただ、任期末までさほど時間はなく、オバマ政権は急な解決の見込みがない北の核問題を先送りしようとしているとの見方も根強い。
 ローズ副補佐官も国内の専門家と同じく、中国に対してメッセージを送った。
 「中国はもっと北に圧力をかけられるはずであり、そうすべきだ」
 米国は中国の協力を継続して促していく姿勢だ。ローズ副補佐官は、韓半島が不安定になれば中国の憂慮が増すことを理解しているとも述べたが、現状維持こそ不安定さを引き起こすと指摘した。


閉じる