瞻星臺=編集余話

日付: 2015年12月02日 09時47分

 女性からの離縁が言い出せなかった江戸時代、数は少ないながらも各地に縁切り寺なる寺ができた。いわゆる駆け込み寺である▼今も縁切りを願って多くの参詣客が来るというが、寺が離縁を取り持ったのはせいぜい明治の初期までで、今は誰が駆け込もうとも、身によほどの危機が迫っていない限り保護などしまい▼昔の韓国に駆け込み寺があったかどうかは定かでない。しかし現在、確実にそれは存在する。ソウル中心部にある曹渓寺だ▼曹渓寺には今、指名手配された男が逃げ込んでいる。昨年4月に不法デモを指揮したとされる男だ。この寺は過去にも、警官に追われた民主化活動家を保護してきた。時は移ろい、民主化が達成されてからも、その”伝統”は続いている▼近年では、2008年の米国産牛肉輸入反対デモや、13年のゼネストに参加したデモ主催者の幹部らが逃げ込んだ。いずれも反政府色と暴力性の強いデモだった▼取り締まるべき警官らは、寺の周囲を囲んで目を光らせてはいるものの、中には入らない。法的に禁止されているからではない。悪しき”伝統”にとらわれているからだ▼日本の駆け込み寺では、まず寺側が女性に復縁を促すのが普通だった。夫を呼んで、話し合いをさせることもあった。どうしても話がまとまらない場合、2、3年で女性は外に出されて離縁成立となった▼曹渓寺は男に対し、警察に出頭するよう説得しているという話は伝わってこない。男は5日、より大きなデモを呼びかけている。おかしな世である。


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