北韓から漂着したと思われる漁船が、東海(日本海)沿岸で相次いで発見されている。毎年冬場になると数が増え、大半は無人か遺体を乗せた状態で発見される。船体は古く装備も貧弱で、外海に出て遭難した可能性が濃厚だ。
11月20日、石川県輪島市沖で木造船3隻が漂流しているのが発見された。3隻には計10体の遺体が乗っていた。検視の結果、死因は特定されなかったが、死後1カ月半から2カ月ほど経過していると推察された。
各地の海上保安本部によると、韓半島から船、あるいはその一部が漂着したと判断されるケースは、30件を超える。船体にハングルが書かれていることなどが判断の根拠になるが、韓国船の場合、遭難したら救難信号を発する。日本の領海に入った可能性がある場合は、その旨を日本側に伝えるため、船体にハングルが書かれた所有者不明の船は、ほぼ100%北韓の船だと関係者は語る。
発見された船は、大半が漁船だという。輪島沖で発見された3隻の船は、積んであった漁具の形状などからイカ釣り漁船とみられる。毎年夏から秋にかけて東海で操業することが多く、特に近年は冬場にかけ、好漁場である日本に近い海域で漁をしているのが確認されている。
漁船の装備は貧弱だ。地元漁師によると、形状や大きさなどから、外洋で操業するのは非常に不安な船体だという。モーターやスクリューも、荒波の中では心もとないサイズだ。
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船上には識別番号と思われる番号のほか、「朝鮮人民軍第325署」と書かれている |
今回発見された10人の服装は長袖の作業着姿だったという。死因は特定されていないが、餓死に加え、凍死や渇死の可能性もある。
船体にはハングルで「朝鮮人民軍第325署」と書かれていた。工作船の可能性も疑われたが、韓国の情報筋はそれを否定する。
「北では地方の軍組織などは配給が滞っているため、自活しなければならない。そのため一部の軍部隊は漁業権を認めてもらい、漁民を乗せて漁をさせている。漁獲物は国内外で売られ、軍人らの生活の糧になっている。仮に工作船だとしたら、遭難するような作りの船であるはずがない」
北韓では現在、金正恩の指示により漁業に力が入れられているといわれる。漁獲高などのノルマが課せられることが多く、漁民は危険な海に船を出した可能性がある。北韓は党創建70年などを盛大に祝い、国力の増強を盛んに誇っているが、住民生活は今も危険と隣り合わせのようだ。