韓国近現代史の教育と歴史教科書の改革問題が、ついに国家的議論の中心となった。結論を先にいえば、現行の高校国史教科書は、自虐史観を超えて、虚偽と憲法精神に反する内容に満ちている。国定化は不可避であると主張したい。
国定化に反対する人たちは、画一的な国定化より検・認定制度が望ましいという論旨だ。しかし、これは問題の本質を糊塗している。問題の核心は国定化か検・認定かではなく、教科書の内容なのだ。
現行の教科書は、歴史を正しく記述しているのか。正常な教科書を無理やり変えるのではなく、憲法に定められた価値を守り、真の歴史を教えるために国定化という緊急措置が必要だということだ。
現行の高校歴史教科書の内容のどこに問題があるのか。現在使われている教科書のほとんどは、「民衆史観」に立脚して書かれている。「民衆史観」は、昨年12月に憲法裁判所の決定によって解散された統合進歩党の綱領の核心だ。憲法裁判所は、統進党の綱領の核心である「民衆民主主義」と「進歩的民主主義」を、北韓が使用する「人民民主主義」と同義語であると判断した。
憲法裁判所は、「民衆民主主義」が階級闘争に立脚したものである点と、いわゆる「民衆民主主義」の「民衆」は日米帝国主義に抵抗する人々を意味し、韓国国民を階級で分けて敵対させる概念であると指摘した。
現在、検・認定を通過した教科書は8種だが、大半の検認定教科書が、大韓民国建国の正統性と産業化の過程を否定する。また、北韓の世襲独裁を「後継体制」と記述するなど、北の用語をそのまま使っているケースもある。
比較的均衡がとれているといわれるのが教学社の教科書だ。しかし、採択した学校は、全国2353校の高校のうち1校だけだ。全教組(全国教職員労働組合)を中心とした左派が、実力行使に訴えてまで採用阻止運動を展開したためだ。国定化により教科書を選択する権利が奪われると主張している彼らは、自分たちが何をしてきたか顧みるといい。韓国の公教育全体が危機に陥ったのは1989年、全教組が違法労組として登場した時からだ。金大中政権は99年、同労組を合法化した。「教員労組」という仮面をかぶった、韓国社会の変革を追求する政治団体が再び法外労組にされたのは今年。実に16年ぶりのことだった。
その間、公教育、特に歴史教育は崩壊し、市場の自由競争を前提とした検・認定制度は無力化された。教育部長官が修正を指示しても、出版界と執筆陣を掌握した勢力は修正指示に従わなかった。今の黄祐呂・教育副総理も、民衆史観を主張する勢力と野党の顔色をうかがい、積極的に是正する覚悟は感じられない。この状況を最短期間で是正できる唯一の緊急措置は、歴史教科書の国定化だ。
野党は教科書問題を政争化している。野党は教科書の内容を度外視し、まだ作成が始まってもいない国定教科書が「親日」と「独裁」を美化する内容だと煽っている。
新政治民主連合の文在寅代表は、現行の検・認定国史教科書の内容に問題はないと断言した。文代表は、内乱陰謀事件で断罪された李石基・元統進党議員を、盧武鉉政権時代に2回も赦免・復権させた人物だ。文在寅代表が率いる新民連は、3年前の総選挙のとき、統進党と政策連帯や選挙協力をした。新民連は統進党解散後も、同勢力との政策連帯を解消していない。
平壌は、南韓社会の同調勢力に民衆総決起を指令している。日本でも韓統連などの「反国家団体」が、一斉に反対活動を始めた。
朴槿惠大統領は残りの任期中、労働、公共部門、教育、金融の4大改革推進を宣言した。中でも教育改革は、その土台であり出発点になるだろう。