【寄稿】朝鮮労働党70年、彼らは何をしたか

金烈洙(誠信女子大学国際政治学科教授)
日付: 2015年10月06日 11時02分

 朝鮮労働党の歴史を調べてみると、以下のとおりである。朝鮮労働党は1945年10月10日、朝鮮共産党北朝鮮分局として設立された。続いて1946年6月、北朝鮮共産党と改名し、ソウルの朝鮮共産党から独立。同年8月には平壌の朝鮮新民党と統合して北朝鮮労働党に名前を変えることになる。  ところが、大韓民国建国直後の1948年12月、国家保安法が制定されて韓国内での活動が困難になると、南朝鮮労働党(南労党)党員が越北する。金日成はこれを機に、1949年6月、南労党と北労党を合わせて朝鮮労働党を作った。つまり朝鮮労働党は、実際には1949年6月に創設されたのだが、北韓は朝鮮共産党北朝鮮分局が設置された1945年10月10日を党創建日として記念している。  このような歴史を持つ朝鮮労働党が、今や数日後に創建70年を迎えることになる。平壌近くの美林飛行場では、数カ月前から朝鮮人民軍3万人が集まって軍事パレードの練習をしており、大同江にはサッカー場サイズの構造物が建設される。そこでは公演や花火の準備が進んでいる。当日は、人民軍の閲兵式と平壌市群衆大会が大々的に開かれる。新型兵器もお披露目されるだろう。また、北韓指導部は、国際社会の反対にもかかわらず、創建日の前後に長距離ミサイル発射と4回目の核実験カードをちらつかせている。 北韓住民は、このようなイベントを望んでいない。金正恩第1書記が今年の新年辞で「祖国解放70周年と党創建70周年を、高い政治的熱意と努力の成果をもって迎えろ」と指示したことにより、北韓の全住民が今年の初めから動員されているからである。このような理由から、党創立日前までダムと発電所などの大型建設事業や、塩辛工場と鶏工場建設などを完了する必要があり、住民は「速度戦」を繰り広げている。行事当日のたいまつ行進に参加する住民も、毎日のように訓練に動員されている。  住民をより憤慨させているのは、このような動員が差別的に行われていることだ。70周年の行事にお金を寄付した人々や幹部は免除され、力のない住民が、速度戦に動員されているからである。また、北韓ウォンで5000ウォン払えば、たいまつ行進訓練を1日だけに休むことができる。お金がない人だけが毎日動員されるのだ。  住民生活をより困難にさせているのは、党創建70周年を口実として、住民に「忠誠の贈り物」が強要されていることだ。金日成の誕生日である4月15日には415万羽分のスズメの羽毛で布団を作って捧げ、金正日の誕生日である2月16日には216万ドル分の金字塔を捧げることが、過去の例にある。苦難の行軍時代に消えた忠誠の贈り物運動が、今回の党創建記念日をきっかけに再び復活した。党創建日を口実に、住民の尻の毛までむしろうというのだ。  朝鮮労働党は、一度も北韓住民の安全と福祉と人権のために献身したことがない。ただ金日成一家の「永世不滅」のために奉仕してきただけだ。2012年4月に改訂された党規約に記載されているように、朝鮮労働党は人民のための党ではなく、「金日成同志と金正日同志の党」であり、「偉大な金日成・金正日主義を唯一の指導思想として」奉ずる党であるからだ。また、「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の指導のもとにすべての活動を進める」(憲法第11条)ようになっており、朝鮮労働党が北韓を統治しているのだ。  朝鮮労働党は金日成一家のために個人崇拝の作業を進める一方、反体制の言動をする人や、家族全員を収容所に送った。さらに、北韓の住民を出身成分に応じて3つの層・45の部類に分類して、日常生活まで監視している。北韓住民の28%にしかならない核心層を除いた45%の基本層(動揺)と27%の複雑層(敵対)の一挙手一投足が監視対象である。  労働党創建日は、労働党と労働党員の祝日でなければならない。それにもかかわらず、党幹部らは手を後ろに組んだまま一般住民に速度戦と訓練を科している。労働者と農民のためという「高貴な精神」は消え、むしろそれらを踏みにじる「動物農場」の豚になっているのである。彼らが民衆のために働く日は来るのだろうか。

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