【座談】分断70年・建国67年<下> 統一の最大の正当性と名分は北韓住民に自由を与えること

太陽政策の失敗を繰り返す訳ない 政府の計画に脱北者も参加すべき
日付: 2015年08月15日 00時00分

金成昱
 金英姫 北の権力エリートは韓国の支援なしでも贅沢に暮らし、30万から100万ドルを貯めるのが目標だという。現金ではなく、原資材を提供する方法もある。北韓経済専門家らは、今が経協の適期だと言う。
 韓国で最近、原子力発電所の建設が問題になったが、私は原発の増設に賛成だ。統一したら、直ちに北韓へ電力を供給せねばならないからだ。
金英姫 北韓政権が崩壊したらそれが統一と言えるのか。北の既得権層が団結して別の政権を立てる事態もあり得る。韓国に来た多くの脱北者が「南朝鮮での生活はきつい」と失望する。北韓住民の心を掴み、彼らを決起させる必要もある。
統一妨害勢力制圧に血を流す覚悟を
 洪 同族の心を得る究極の道は、同族を救うため血を流すことだ。6・25戦争のとき、国軍23万人が犠牲になった。統一妨害勢力を克服するため、その程度の犠牲を覚悟すべきだ。
金英姫 平和統一は建前だ。北韓住民が純粋に韓国に憧れるようにすべきだ。
 統一達成まで韓国陸軍を削減しないことだ。兵力削減は、内外に統一意志のなさを宣言するも同然だ。
金成昱 同族のため犠牲を払いたくないから平和統一を強調する。平和統一を「絶対化」すれば、統一は不可能だろう。
金英姫 北韓住民に、自由民主主義と市場経済の良さを信じさせねばならない。とりあえず、脱北者2万8000人を活用すべきだ。
 自由民主主義の目指す価値は、個人の自由と安全の拡大。北韓同胞にそれを与えれば良い。
金英姫

北核実戦配備後は韓国の生存が急務
金成昱 私は統一を急ぐべきだと信じる。統一のためには、北の核問題を解決すべきだ。北の核解決の時限は今後3年くらい。小型化された核兵器をDMZの北側に配備した「屏風戦略」では、北側が挑発しても韓国の指導者は反撃を決断できない。北韓は戦争ができるが、韓国はできない。核兵器体系を持った体制が滅びた例がない。韓国の選挙も「北韓を刺激する」政治家は選ばれない。
金英姫 北核の解決は北韓政権が崩れる前には絶対できない。
金成昱 北韓で下からの革命は可能か。非正規戦を通じて韓国から体制維持用のドルがせびれるし、核兵器を北韓体制強化手段として使えば滅び難い。
金英姫 韓国で大学教授をしている脱北者は3年以内に北が倒れると言うが、今の状況では金正恩体制の崩壊は難しいと思う。
金成昱 私の考えを整理すると、北韓の核兵器が小型化されれば、韓国が北韓の人質になる。そうなれば、金正恩など北韓体制の瓦解や北韓住民の心を得ることなどよりも、大韓民国の体制維持がもっと重要になる。北の人質になって平壌側が韓国の人事権にまで介入するようになれば、統一は遠のく。したがって、いかなる手段を使ってでも、北韓政権にお金が入るのを止めねばならず、金正恩の下賜品に変わる人道支援も止めねばならない。韓国の対北支援金は1997年から2007年まで、69億5000万ドルだった。この金額は北韓住民の23年分の食糧購入金額に該当するが、北韓の軍事費支出は1997年以後3倍に増え、核兵器が作られ、3代世襲が完成した。北が核実験をした2006年に最も多額の現金が提供された。太陽政策の失敗を繰り返す訳にはいかない。
 北の独裁者の首に、オサマ・ビン・ラディンのように懸賞金をかけるアイディアも聞かれる。
金成昱 統一は歴史的経験と科学と統計などを参考にすべきだ。西ドイツは東ドイツへの支援で「3不原則」を守った。東ドイツの変化に応じて支援した。北韓住民の意識変化という曖昧で計量化し難いことではなく、南韓テレビを住民が自由に視聴できるようにするなどの条件を付けねばならない。
福祉予算を脱北者救出の「民族福祉」に
 昨年、韓・日の海外旅行者数は共に約1600万人だった。韓国は全国民の30%以上が海外旅行をした。このような事情を勘案すれば、「普遍的福祉」予算の一部を、中国内の脱北者たち、特に女性と子供の救出に回すべきだ。脱北者救出の「民族福祉」に、だ。
経協による北の変化誘導は幻想
金成昱 経済協力で北の変化を誘導するという統一準備委の方向設定は間違っている。北が核兵器を実戦配備すれば、北韓体制の瓦解でなく、韓国の主権維持が危うくなるからだ。
金英姫 韓国が赤化されるはずがない。北韓は米国を本当に恐れている。統一すれば、脱北者たちは皆、北へ戻る。
金成昱 米国の考えは、北の核兵器が外へ拡散しなければ良い。北の体制が崩壊した後、北韓同胞は韓国との統一を望むはずだ。韓国の福祉と人権が中国よりもいいからだ。脱北者たちは神様が先に南へ寄越された存在で、北韓再建の主人公、北の再建の先頭に立たねばならない。今の苦難は、厳しい訓練期間と思うべきだ。統一後の指導者がその中から出なければならない。
金英姫 脱北者たちは、統一人材として養成するなど政府の話を信用しない。言葉だけだ。脱北者の中に行政経験者も、金融経験者もいない。政府部署や地方自治体が脱北者を採用しない。いま脱北者は韓国社会で融和していない。
歴史の転換期には指導者の決断が
金成昱 統一には過程が必要だ。政府の計画に脱北民も参加すべきだ。私は統一後、蓋馬高原から出馬したい。韓国人の統一に対する無知と利己心、統一を回避する知識人たちが歴史発展の障害だ。1948年8月に大韓民国の建国に賛成した人は多くなかった。ソウルでの世論調査結果は社会主義選好が72%だった。朴正煕大統領が高速道路を建設するときも、自動車のない韓国で高速道路は必要ない、が世論だった。指導者が世論に屈服せず決断したのだ。大衆の無知と無関心が変わるのは難しいが、歴史が変わるとき、大きなターニングポイン、それが統一だ。
金英姫 脱北者たちは脱北者同士で力を付けようとしている。ところが、当局は脱北者の団結を望まない。
金成昱 北を徹底して圧迫すれば、3年以内に無血統一ができるかも知れない。自由統一に抵抗する勢力とは対決せねばならない。
 太平洋戦争で日本人犠牲者は310万人、韓半島で分断70年間700万人が死んだ。第2次世界大戦後140カ国の独立国のうち、韓国が最も成功した国だ。そして今、21世紀の地球上で大韓民国ほど大きな挑戦と機会が与えられた国はない。北韓解放・統一は、韓民族が世界に貢献し躍進する機会だ。長時間討論して下さったお二人に感謝する。

金成昱(キム・ソンウク)
1971年ソウル生まれ。延世大学で国際法を専攻、同大学院博士課程修了。週刊誌記者時代から北韓と統一問題に取り組み、06年からフリーランスとして活動。(社)韓国自由連合代表理事。リバティー・ヘラルド代表。

金英姫(キム・ヨンヒ)
1965年咸鏡北道吉州生まれ。鄭俊澤元山経済大学卒。2002年、夫婦で脱北して韓国入国。13年、東国大学で北韓学博士号取得。産業銀行経済研究所首席研究員。同銀行北韓経済チーム長。


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