国連北韓人権事務所(ソウル)の開所に対して、北側が断末魔の反発を見せている。わずか1週間前に「共和国政府声明」なるものを発表し、「歴史的な6・15共同宣言の旗に従って北南関係の発展の転換的局面を開いていかねばならない」と、自ら再三破棄を宣言した南北間合意の履行を強調した平壌が、国連北韓人権事務所に対して攻撃を開始した。
北韓人権事務所の最も重要な仕事は、北での人権侵害を記録し保管することで、この記録は将来、人権侵害犯罪者を裁く材料になる。金正恩とその体制に忠誠を誓う労働党などにとっては悪夢以外の何物でもない。
金正恩体制が感じている恐怖はどれほどか。平壌の反応を見てみよう。
北の外務省は6月22日、「代弁人声明」を通じて、「ありもしない人権問題をもって、わが共和国の尊厳を毀損しながら我々の思想と制度を必死に破壊しようとする不純敵対勢力らの策動が挑発的な段階で行われている」、「我々は敵対勢力の無謀な反共和国人権謀略策動を断固とした超強硬の対応で徹底的に粉砕する」、「人権擁護という美名の下、朝鮮半島と地域の緊張を激化させ対決を鼓吹する犯罪行為」と激しく反発した。
自ら人民の楽園だと宣伝してきた北が、なぜその人民の人権に関心を持つ国連に反発するのか。北に人権蹂躙などないなら、国連の関係者を平壌に入れて状況を調査させればいいはずだ。平壌の行動は、金日成と金正日が核兵器を開発する際にIAEA査察官の査察を拒否し、彼らを追放したときと同じだ。
平壌の労働党は、「我々の度重なる警告にもかかわらず、傀儡一味が国連北韓人権事務所を設置し、悪化している北南関係は、もはや収拾のできない破局に向かっている」、「最後まで対決するという露骨な宣戦布告」などの激しい非難(6月25日、祖平統声明)を浴びせた。
6月28日付の労働新聞は、「北韓人権事務所がソウルに巣を作ったことで、北南関係は最悪の破局を迎えることになった」、「それに対する責任は全的に外勢と組んだ反共和国人権謀略にますます走る傀儡逆賊一味が負うことになる」と主張した。
北は一体なぜソウルを非難するのか。国連総会に報告され、承認された「事務所」について韓国を非難するのはおかしい話だ。人権事務所の設置が気に入らないなら、到底容認できないなら、国連を脱退すればいい。
北韓では公開処刑が行われているという。それも、対戦車兵器などを用いた非情な手段で。会議のとき居眠りをしたという理由で公開銃殺をする集団が北韓のほかにあるのか。平壌は先月にも、人民武力部長を機関銃で公開処刑している。テロリスト集団に公開処刑の方式を教え、輸出したのは平壌だ。
平壌は先月、北韓に人権問題がないことを示すため訪日した親北米国人シン・ウンミ氏を、再び平壌に呼んで宣伝に利用した。しかし、日々粛清と処刑の恐怖に戦いている労働党幹部の多くは、金正恩が一日も早く消えるのを待っている。
問題は、日本に金正恩を支持・宣伝する勢力が存在することだ。金正日と6・15共同宣言をした金大中を民主的政治家と宣伝してきたのは朝総連と韓統連だが、金大中は、金正日を識見のあるリーダーと称え、日本人を拉致した辛光洙を含む非転向長期囚を北へ帰した。この金大中政権を日韓関係で最も友好的な政権だったと評価する者の中には、元外務省幹部、日朝国交正常化交渉担当大使もいる。(続く)