北、核弾頭の小型化成功を宣言 

瀬戸際外交 動じぬ韓米
日付: 2015年05月27日 00時33分

 「瀬戸際外交」という金正日時代から使い古されてきた戦術を、金正恩は引っ張り出してきた。その効果は今や薄いとわかっているはずなのに、なぜ立て続けに危機をあおろうとしているのか。韓国も米国も、北の脅しに対し、慌てて交渉のテーブルにつくことは考えられない。北の指導部が狙っているのは、外部の反応を引き出すことよりも、内部の引き締めにあるといっていい。

内部の引き締めが目的か

 「短中距離ミサイルだけではなく、長距離ミサイルでも最高の確度を保証できる段階にわれわれは到達した」
核弾頭の小型化について北韓の国防委員会は20日、声明を発表した。以前から成功しているとのうわさがあった核弾頭の小型化を認めた形だ。発表が事実だとすれば、米国本土も射程に入れる弾道ミサイルに、核弾頭の搭載が可能になる。
米国の反応は冷ややかだ。米国家安全保障会議(NSC)のベントレル副報道官は国防委員会の発表を受け「北韓が能力を持っているとは思わない」との見方を示した。米国務省も同様の見解を示している。
北韓のSLBM発射に懐疑的な見方を示したウィネフェルド大将
 一方、軍関係者は警戒している。4月には北米航空宇宙防衛司令部のウィリアム・ゴートニー司令官が、北韓が小型化された核弾頭を発射する能力を持っていると発言したばかりだ。
韓国国防部は、「(小型化は)相当な水準」と認めつつ、ミサイルに搭載可能なまで小型化したという見方には懐疑的だ。
北韓は20日の発表の少し前、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に成功したと発表したばかりだった。しかし米軍は画像が合成だったと分析。ジェイムズ・ウィネフェルド海軍大将は「幸い北には私たちを信じ込ませられるような賢い映像編集者はいない」とまで断言した。
韓国国防部関係者は、「発射実験自体はでっち上げではないと韓国側はみている」と述べたが、北韓と早急に協議するといった姿勢はまったく示していない。
これまでの経緯を見れば、北韓は韓米にとって脅威となりうる2枚のカードを切ったものの、両者は北韓が期待したほどの動揺を見せていないといっていい。北韓が対話のテーブルに引き出したいと願う米政府は、非常に懐疑的だ。
北韓の瀬戸際外交は、今まである程度の成果を収めてきた。最初の大きな成果は金日成時代のプエブロ号拿捕事件(68年)だろう。94年の核危機で米朝枠組み合意を引き出すと、その後も核開発を武器に周辺国から支援や譲歩を引き出してきた。しかしその効果が薄まっていることは、北韓当局も気づいているはずだ。
韓国の対北情報筋の間では、一連の発表は内部引き締めという性格が強いとの分析がある。おりしも4月末、玄永哲・人民武力部長が粛清された。対外的な緊張を作り出すことによって、権力層の関心を外に向ける効果も期待できる。
SLBMの発射への反応が芳しくなかったための結果が、今回の「核弾頭小型化成功」宣言だ。その宣言も大した関心を集められずにいる今、北韓が核実験などを行い、存在をアピールする可能性は残っている。


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