韓国政府の外交政策に対して修正を求める世論が高まっている。インドネシアでの日中首脳会談や安倍晋三首相の訪米を受け、韓国が”孤立”するとの懸念が生じたためだ。野党はもちろん、与党側からも外交の立て直しを求める声が相次いでおり、朴槿惠政権は対応を迫られている。ただ、「韓国孤立論」は日本との比較に基づいたもので、根拠は薄い。韓国が置かれた立場を冷静に見極め、対日外交に反映すべきとの声も高まっている。
”韓国の孤立”を懸念する声は、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が先月、インドネシアのジャカルタで首脳会談を行ったことを受けてからのことだ。それから約1週間後の日米首脳会談では両国関係が「不動の同盟」であることが強調され、安倍首相の米議会演説についても、米政府側は好意的な受け止め方をみせた。こうしたことから韓国外交が失敗しているとの見方が広がっているのだ。
今月1日に国会で開かれた外交・安保対策党政会議では、与党セヌリ党が政府には外交安保戦略がないと厳しく批判した。
「悪化の一途の韓日関係と韓米関係に対し、さまざまな懸念がある」「韓日関係の改善と北東アジアの平和協力の機会を逃したのではないか」などといった指摘だ。与党関係者は会議後「周辺の強国が実利のため積極的に動いているのに、韓国政府だけが、あれこれ顔色を見るばかりで、孤立しているではないか」と強い調子で懸念を示した。
韓国メディアも政府の外交政策の見直しを求めている。
中央日報は2日付の社説で、「外交ラインの人的刷新を含め、全面的な外交戦略の再検討が求められている」と主張。韓国日報も社説で、「朴政権の外交政策には実効性のあるビジョンと戦略がない」と指摘した。
外交部の尹炳世長官は「中国と建設的な協力関係にあり、米国との原子力協定の改定など韓米同盟が強化された状況で、いきすぎた解釈だ」と反論した。また、日米関係の進展に関係がなく、韓米関係は現政権発足後に強化されており、米国も韓米同盟を歴代最高だと評価していると強調。韓米同盟と日米同盟は相互補完的な側面があり、これを「ゼロサム」(どちらかの関係がプラスに動いた際、他方の関係がマイナスに動くという考え)の観点から見るのは望ましくないと述べた。
日米、日中関係の改善は、韓国に悪影響を与えるものではない。日本と米国、日本と中国が必要により関係を強化することは、韓国が介入すべき問題でもない。
国立外交院の尹徳敏院長は「安倍首相の発言や行動で韓国外交安保を評価してはならない。また、朴大統領も訪米時に米議会で演説した。安倍首相が演説したからといって外交の失敗というのは無理がある」と指摘する。ソウル大国際大学院の辛星昊教授も「オバマ政権が掲げるアジア重視のリバランス(再均衡)政策で、日米同盟以上に韓米同盟も重要だ。日米同盟が強化されたからといって韓米同盟が弱まることはない」と強調した。
とはいえ、「日中の改善」「日米の蜜月」という新たな外交環境は、韓国政府に戦略の練り直しを迫っていると言える。
日中関係の改善にはそれぞれの思惑があった。成長が鈍化する中国には、日本との関係強化が経済立て直しの柱の一つだとの判断がある。創設を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)を成功させるため、日本を引き込みたいとの狙いもあっただろう。また、訪米を控えた安倍首相には、日中対立の先鋭化を懸念する米国に、対話を進める姿勢を示す必要があっただろう。
そんな中で韓国政府は、慰安婦問題の進展を韓日首脳会談の前提とする姿勢を崩していない。米国の圧力に頼る対日外交の限界にぶつかり、手詰まり感が漂っていないか。習主席が歴史問題より外交実利を選択したように、韓国も積極的な外交政策を展開すべきだとする声が強まっている。この声に朴政権は耳を傾けてもいい、ほどいい時期に来ていよう。