国家保安法違反(特殊潜入および脱出)で有罪となった男性が、在日本朝鮮社会科学者協会(社協)幹部とやり取りをしていたことがわかった。韓国の裁判過程で明らかになった。男性は解散した元統合進歩党の中核的な党員で、同党と総連のつながりを示す一例といえる。
大法院(最高裁に相当)は6日、民族舞踊グループ「チュル」の全湜烈代表に懲役5年・資格停止(公民権停止)5年を言い渡した。今年1月のソウル高裁判決を支持した形だ。
捜査を担当したソウル中央地検によると、「全湜烈は在日工作員、朴某に包摂されて2011年3月、中国上海で225局の工作員と接触。2012年6月には在日の工作員に国際電話で情勢報告などを行った」という。225局は平壌の対南工作機関で、全被告は統進党の内部情勢などを報告し、工作金を受け取っていたという。
全被告は95年に大学を卒業後、日本にも何度か入国している。この際に、朝鮮総連傘下の社協中央の朴在勲副会長と知己を得たとみられる。朴氏は朝鮮大学校経営学部副学部長で、若い時から朝青責任指導員などを務めてきた。平壌の社会科学院との共同学術討論会にも出席している。
社協や在日本朝鮮人科学技術協会(科協)の歴代幹部には、韓国で逮捕された工作員への思想教育や連絡に携わったとされる人物が少なくない。北韓サイドは、全被告が日本で工作員と接触したことはないと否定している。
全被告はその後、統進党の前身となる民主労働党結成に参加。最終的には統進党のソウル永登浦区統合選挙管理委員長になっている。
裁判資料からは、225局の指示を受けた全被告らが、民労党の掌握を命じられていたことも明らかになった。党内の情勢を報告していたのはそのためとみられる。党の掌握を図っていたグループは、内乱陰謀罪で起訴された李石基・元議員が率いていた「革命組織」(RO)だという。