「韓国の枠超え世界へ」

新韓銀新行長・趙鏞炳氏インタビュー
日付: 2015年03月18日 00時00分

 在日韓国人が「金融報国」の夢を抱いて、1982年に母国に設立した新韓銀行に、新たなリーダーが誕生した。趙鏞炳銀行長(57=写真)は、18日に銀行の理事会と株主総会で追認を受け、今後2年間、「新韓銀行号」の舵を取ることになった。韓国の金融界では、趙銀行長がグローバル事業と資産運用の経験を生かし、新韓をさらに飛躍させるだろうという期待が出ている。「新韓を険峻な峰をも駆け抜ける実力者にし、世界の大手銀行に挑戦する」。抱負を述べた趙銀行長は、創業株主である在日韓国人のため、国内外のマスコミで初めて本紙のインタビューに応じた。(ソウル=李民晧)

「在日同胞が大きな力に…」


 日本での勤務をあまり経験されていないので、在日韓国人株主の間では、新韓と自分たちの間に距離が生じるのではないかと懸念する向きがあるようです。

「国内外で低成長・低金利基調が長期化するなど、さまざまな面で困難な時期に銀行長を任されることになり、重責を感じています。私は日本支店に勤務したことがないだけで、在日同胞とは折に触れて縁を結んできました。創業の草創期から30年以上、新韓だけに身を置いてきました。銀行設立時からIMF危機、世界的な金融危機の克服に至るまで、在日同胞が苦労しながら大きな力になってくれたことはよく知っています。日本の現地法人であるSBJ銀行を設立するときにはグローバル事業グループ長を務め、銀行設立のサポート役に回りました。在日同胞との大切な縁が、今後さらに堅固になるように努力したいと思います」
 新韓で担ってきた役割の中で記憶に残っているのは。
「84年に入行し、複数の部門を経験しました。このうち最も記憶に残ることを選べといわれれば、07年から支店長としてニューヨークに2年間勤めたときのことと、帰国後にグローバル事業グループ長を務めたときのことです。ニューヨーク時代は緊急の外貨調達をしたこと、グローバル事業グループ長時代にはSBJ銀行の設立が記憶に残っています」
 ニューヨーク支店長時代には、リーマン・ショックがありました。新韓銀行も危機だったのでは。
「そうです。08年にリーマン・ブラザーズが破綻し、韓国の国内銀行は緊急事態に陥りました。その余波で国内の銀行は外貨資金不足に陥り、大きな困難に見舞われました。新韓も困難な状況でしたが、幸いなことに他行よりも早く外貨資金を調達することができました。普段地道にウォール街の金融機関を対象にした新韓のIR(投資判断に必要な情報の提供)を行っていたからでしょう。こつこつと新韓の優秀さをアピールしてきたからでしょうか、彼らは新韓の財政安定性を認めてくれたのです。簡単ではありませんでしたが、外貨調達に成功し、組織の危機克服の一助になれたと自負しています」
(新韓金融グループは03年9月にニューヨーク証券取引所に上場。趙銀行長は、リーマン・ショック時にニューヨーク支店長として、緊急資金として1億ドルを調達した)
 銀行のトップを引き受けることへのプレッシャーは。
「新韓で30年以上勤務し、組織の隅々まで精通していると思います。副行長時代、海外事業を担当するグローバルグループや、国内リテール営業を統括する営業推進グループなどで、広く深く組織運営を経験しました。ですから銀行経営に対する負担はあまりありません。『大事を成し遂げるには止まっていてはならない』という、『致遠恐泥』の心構えを持って、銀行をより飛躍させたいと思います」
 在日韓国人が今まで果たしてきた役割について、どのように考えていますか。
「グループの韓東禹会長が、私が銀行長に内定して最初に言ったのが『在日同胞株主は今の新韓をなした根幹だ。金融報国という在日同胞株主の創業理念を心深く刻んで任務に取り組んでほしい』という言葉でした。グループのモットーである『金融の力で世界を利する』という『あたたかい金融』も、在日同胞株主の創業理念に根ざしていると思います。過去に日本を訪問していますが、懇親会などで、多くの同胞株主の方々が『何があっても応援する』と励ましてくれました。ありがたいことです」
 韓国銀行が基準金利を1・75%に下げ、銀行の収益性悪化が現実化しています。リーディングバンクの地位を固めるための戦略は。
「基準金利引き下げは、昨年から今年にかけてすでに3回目です。状況に合わせて対応策を設けるのも忙しいほど、経済環境が急速に変化しています。しかし、真の実力者であれば、アジア、さらに世界市場をリードするワールド・クラス・バンクに飛躍することができます。強い新韓を作る力を、3つに絞って説明したいと思います。まずは豊かな人材です。能力のある従業員を適材適所に使うということです。第2は戦略を立てて実践することです。いくらいい企画でも、実践に移せなければ意味がありません。第3に、新韓の組織文化です。在日同胞株主の創業理念が母胎となった誇らしい新韓文化を発展させ、全職員が確固たる『主人精神』の下、強い結合力と創造、革新のエネルギーを発揮できるようにすることです」
 リーディングバンクの地位を確固とするために具体的にどのような戦略を持っていますか。
「収益性と健全性の向上、グループ企業間のシナジー効果創出力の向上、顧客と社会、銀行がともに成長する『未来をともにするあたたかい金融』の強い実践力確立です。国際的な力量を強化して『金融韓流』のリーダーとしての地位を確立し、デジタルバンキングの競争力向上にも力を注ぎます。また、銀行内の各部署とグループ会社などとのコラボレーションにより、経営のプラットフォームを革新し、新事業モデルの開発にも邁進します。このような戦略を推進するには、前述したように、強力な新韓の組織文化が力を発揮しないといけません」
 海外事業の強化は、国内銀行の共通課題です。新韓だけの差別化されたグローバル戦略は何ですか。
「新韓は現在、16カ国に70社のグローバルネットワークを保有しています。すべての海外チャンネルで質的成長を追求した結果、昨年、国内の市中銀行で初めて海外利益1億ドルを突破しました。新韓が持っている強みやノウハウを海外に適用し、今年は昨年の損益割合である8・74%を超える10%レベルを達成したいと思います。中南米、中東地域に新規参入する一方、アジアの有望な市場にもチャネルを拡張していきます」
 日本現地法人であるSBJの現在までの成果と今後の発展の方向は何でしょうか。
「09年に設立したSBJは、実質的に日本における唯一の法人形態の外資系金融機関です。現在設立当初に比べ、総資産は1・5倍に増加(14年末基準で44億ドル)しており、韓国系を代表する金融機関として、独歩的な地位を構築しました。新韓がより世界に広がっていくためには、基軸通貨国で安定的にローカルビジネスを営みながら、資金調達能力を強化することが非常に重要だと思います。そのため、今後はSBJの収益源を多角化し、現地中心の顧客基盤を安定・強化させ、戦略的な地位をより高めていくことです。在日同胞社会の金融ニーズに積極的に応えるための努力とともに、『長期住宅ローン』などの差別化された商品でニッチ市場を攻略し、『太陽光ファンド』などの戦略的産業分野を中心に企業金融を拡大する計画です」
 SBJは在日韓国人社会の発展にどのように寄与していくべきだと思いますか。
「SBJが在日同胞社会とともに歩み続けるのは当然のことだと思います。その一環として、金融機関として、韓日両国の架け橋としての役割を忠実に果たそうと思います。『四天王寺ワッソ』、『日韓交流おまつり』などの文化交流行事や在日韓国奨学会への後援、各地域の韓国語教室の運営支援など、直接的または間接的な努力を続けていきます」
 新銀行長は在日韓国人とどのようにコミュニケーションをとっていくつもりですか。
「今後も統一日報をはじめ、さまざまなチャネルを通じて、在日同胞の皆さんとコミュニケーションをとる機会を設けようと思います。最近、悩みが一つできました。どうすれば早く日本語を身につけられるかということです(笑)。在日同胞とのコミュニケーションの扉はいつでもオープンです」


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