原爆は強力な兵器であるが、核分裂反応の連鎖反応の進行時間と温度上昇による飛散(爆発)までの時間との競争の問題などから、ウラン235(235U)やプルトニウム239(239Pu)をどんなに増やしても、最大でも広島・長崎級原爆[1]の10倍程度の爆発エネルギーをもつ原爆しか作ることができない。
それに対して、熱核反応(核融合反応)はそれを起こす物質を追加すればいくらでもエネルギーを増加させることができるという特徴を持つ。そのため、特に二重水素・三重水素の熱核反応(D-T反応、D-D反応)を利用することで、広島・長崎級原爆の数十倍〜数百倍の爆発エネルギーを持たせた核兵器が開発できると見込まれていた。実際、原爆開発技術を独占していた米国において、原爆保有国となったソ連に対抗するため、トルーマン大統領によって製造命令が下されたのが、原爆を起爆装置として重水素を熱核反応させる水素爆弾 (hydrogen bomb) である。初期の核融合装置は液体の重水素を用いており、装置が巨大で実用化には至らなかったが、重水素化リチウム(LiD)を用いることにより、実用化に至った。原子爆弾を起爆装置として用い、核分裂反応で発生する放射線と超高温、超高圧を利用して、水素の同位体の重水素や三重水素(トリチウム)の核融合反応を誘発し莫大なエネルギーを放出させる[4]。高温による核融合反応(熱核反応)を起こすことから「熱核爆弾」や「熱核兵器」とも呼ばれ、核出力は原爆をはるかに上回る。なお、中性子爆弾や3F爆弾も水爆の一形態である。