追いつめられる金正恩  金正恩のICC提訴 安保理で協議開始 

サイバー攻撃に報復?「テロ国家」への再指定も検討
日付: 2015年01月01日 00時00分

【国連】

 国連安全保障理事会は12月22日(現地時間。以下同)、北韓の人権問題についての協議を始めることになった。同問題が安保理で話し合われるのは初めてのことだ。
議題化にあたっては中国が「安保理は人権を協議するのに適した場ではない」と反対。15の理事国で表決を行ったところ、米国や韓国など11カ国が賛成した。中露が反対し、チャドとナイジェリアが棄権した。中国代表は「中国は韓半島に隣接している。半島でいかなる混乱も生じさせるわけにはいかない」と反対理由について述べた。
北韓の人権状況については14年2月に事実調査委員会(COI)が報告書をまとめ、国連総会で12月18日、北韓での人権侵害が国際法上の「人道に対する罪」にあたるとして安保理に国際刑事裁判所(ICC)への付託や指導者らへの制裁強化を求める決議が賛成多数で採択されていた。
これに対して北韓は 20日、決議は米国が主導したものだと主張し、「核武力を含む国の自衛的国防力を強化する」と反発。また「すべての核兵器および既存の核計画を放棄すること、並びに、核兵器不拡散条約およびIAEA保障措置に早期に復帰すること」と定めた05年の6カ国協議での合意を米国が「白紙化した」と非難した。
一方、韓国では与野党がそれぞれ発議した北韓人権法案が、11月から国会の外交統一委員会で審議に入った。法案が当時ハンナラ党の黄震夏議員によって05年に初めて提出されてから約10年、法案の成立に向けてようやく動きだしたが、12月9日に閉会した通常国会では成立しなかった。
安保理で北韓の人権問題を扱うことに賛成(挙手)する韓国代表(右端手前)。その隣のロシアと中国代表(右端奥)は挙手せず

北韓は韓国での動きに対しても、「北南関係を一層収拾できない最悪の破局に追いやる」と述べており、人権問題での追求に神経をとがらせていることがうかがえる。
仮に安保理で決議されICCが調査することになった場合、ICC未加盟の北韓に捜査当局者が乗り込んで責任者を逮捕することはできない。しかし加盟国への渡航は、逮捕される可能性があるため制限される(中国は未加盟)。国際的に北韓の人権侵害が問題だという点を知らしめた効果も小さくない。
ICC付託に関しては、COIの報告書で明言化されるかどうかという最初のハードルを越え、国連総会での決議という2つ目のハードルも越えた。その過程で北韓の人権状況については知れ渡ることになった。
最後で最大のハードルである安保理での決議は、拒否権を持つ中国とロシアの動きが不透明だが、「チェック・メイト」寸前まで追い詰められた金正恩は圧力を感じるに違いない。

北韓のサイバー攻撃で考え込むオバマ大統領
【米国】

米国の対北姿勢が強硬化している。最近の例を挙げると、11月末に起きた米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)への大規模サイバー攻撃への対応だ。SPE社は金正恩暗殺をモチーフにした映画を配給予定だったが、攻撃を受けたことで上映を中止した。
FBIは12月19日、「北朝鮮政府に責任があると判断するのに十分な情報を集めた」と発表。22日には北韓でインターネットが機能停止に陥ったことが報じられた。米国務省は当局の関与について明言を避けた。
今回は私企業への攻撃だったが、米軍のネットワークが対象になれば軍事挑発行為になる。そのため米国が北に報復を行ったとの見方が濃厚だ。
またこのサイバー攻撃を受け、オバマ大統領は21日、北韓を「テロ支援国家」に再指定するかどうか検討していると表明した。韓国への軍事支援拡大も検討中だという。米国は08年に北韓をテロ支援国家から除外している。
米国は12月18日にキューバとの国交回復交渉を始めたが、北韓については「核やミサイル開発を続けていて、キューバとは懸念のレベルが異なる」と述べた。北韓としては強硬姿勢を続けていれば米国が折れると期待したかもしれないが、それも外れたようだ。

【朝総連】
朝総連本部会館

朝鮮総連の本部建物・土地が、高松市に本社を置く不動産会社「マルナカ・ホールディングス」の所有となって1カ月以上が経過した。マルナカは退去を求める方針を打ち出しているが、総連職員はいまだに使用を続けている。総連が立ち退かない場合、マルナカは東京地裁に「引渡命令」を申し立てることができるが、その期限まで1カ月を切っている。遅くとも1月末までには退去、あるいは「引渡命令」が下されるとの見方が濃厚だ。
仮に引渡命令が出ても、総連側は東京高裁や最高裁に不服申し立てができる。とはいえ所有権移転が覆る可能性はゼロに近く、「事実上の北韓大使館」と呼ばれた総連本部が解体されるのは時間の問題だ。


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