統一準備委 金錫友委員  「北韓政権は不安定 統一に備え対策を」

分断状況を「管理」せず、解消する意識が重要
日付: 2014年08月27日 05時40分

 本紙8月15日付で統一準備委員会のことなどについて語った金錫友氏に、周辺国との関係や統一に向けた課題について聞いた。統一のためには韓国民の意識改革が必要だと訴えている。

 持続的な経済成長が、中国の体制維持のカギだということでしょうか。
「そうだ。改革開放放棄に固執する北韓を放置しておくより、韓国主導の統一の方が中国の国益に役立つ。中国と北韓が毎年祝ってきた6・25(朝鮮戦争)祝賀行事が今年は行われず、中国がその戦争を『抗米援朝戦争』と呼ばなくなったことも注目すべきだ。もはや韓半島を客観的に見るというシグナルであり、平和を脅かす北韓を容認しないという表現と捉えられる。すでに中国は、韓国がもたらす効果を正確に知っている。中国の高度経済成長の背景には、韓国の華僑資本の投資に加え、韓中国交正常化があった。両国の貿易規模は(国交正常化した)92年の40億ドルから2300億ドルへと急増している」
統一準備委員会は▼外交安保▼経済▼社会文化▼政治・法制度の4分科委からなる組織ですが、金院長が所属する外交安保分野の課題は、どのようなものでしょうか。
「外交を通じて、周辺国自らが、統一が分断より利益になるという事実を知ってもらうようにすることだ。今までの政府はその努力をほとんどしていなかった。外国としては、現状維持、つまり分断現状の持続の方が楽だと見る傾向が強い。統一は現状打破、自国の利益に反することになるだろうという恐れを持っている。私たちが統一への意志を積極的に表示し、協力してもらう必要がある。かつては平和主義者の仮面をかぶった人が、スイス型の中立国でなければならないと主張をしたこともあるが、現実性がないフィクションだ。韓国内では、『分断管理』の意識からすぐに脱却することが最初の改善課題になる」
韓日関係が悪化しています。対日統一外交は、そのような点が重要になると考えますか。
「韓日関係が悪化しているのは事実だが、歴史の大きな流れの中で見ると、最悪ではないと思う。久保田妄言(日韓国交正常化交渉において、日本側の久保田貫一郎代表が、植民地支配を肯定する発言を行ったこと)や、文世光事件(北韓の支持を受けた在日青年による大統領夫人暗殺事件)の時は、国交断絶の準備までしたほどだった。今の韓日関係の悪化は政治家の問題で始まった。人口5000万人の韓国人は、年間1500万人が海外旅行をする時代だ。1億2500万人の日本人は年間1750万人だ。韓国社会がどれほどオープンで、世界と交流しているかを知ることができる一つの指標だ」
日本が南北間の等距離外交を繰り広げ、南北双方に警戒感を与えたことがありますね。
統一に否定的な考えを持つ人も増える中、統一を支持する若者も
 「今の時代はそれが現実的に難しくなった。中曽根元総理は83年に米国より韓国を先に訪問し、経済力に相応する政治先進国になると宣言したではないか。日本はより大きな国際社会のリーダーとしての役割も強調してきた。日本が使ってきた南北等距離外交は、かつて本当に恐ろしい日本の武器だったが、今は使えないと思う。一方、韓国も日本人拉致問題の解決は当然助けるべきだ。とはいえ、日本が北韓の経済回復や住民の生活向上に役立たない支援をすれば、南北両方の住民から歓迎されないだろう。国務省をはじめとする米国政府も、日本に過度な支援を自制するよう強調している」
統一に対する国民の意志を啓発する鍵は何ですか。
「70年にわたる分断により、統一より現状の管理の方が楽だという意識が広まってきた。北韓政権の維持を望む思考や、統一に対する漠然とした恐怖感が芽生えてきた。若い人たちは、統一すれば自分たちも滅びる、貧しい友人が南下してくると、自分たちも食べられなくなると考えている。統一は災いではなく、ブルーオーシャン(開かれた新天地)の巨大な新市場と希望が必要だ。統一は不慣れな人との出会いのプロセスだが、非常に大きなチャンスになるのだから」
ドイツの場合、ベルリンの壁崩壊から経済が正常化するのに15年かかりましたが。
「ドイツの専門家は、韓国はそれよりも早く、7~8年で正常化されると分析している。統一の過程で、韓国にいる2万7000人の脱北者が大きな役割を果たすことになるだろう。私が統一院次官だった時代、脱北者は年間10人ほどから30人以上に増える兆しを示していた。このトレンドが続くと判断してハナ院を建て、生活維持支援法を作り、彼らの定着を支援する体制を構築した。成功する脱北者が増えるほど、統一の担い手として大きな恩恵となるだろう。今も脱北者1人の送金で北韓住民20人が食べられる」
急変事態の危険性として、急激な北韓住民の南下、これに伴う社会的混乱が予想されますが。
「確かな研究の結果、北韓で急変事態が起きても、住民の大量脱北は起こらないだろうといわれている。大量脱北は杞憂にすぎない。日本でも数十万人のボートピープルが来るとか、中国にも信じられない数の脱北者が押し寄せるとか、噂話が回っているが、根拠に乏しい話だ。せいぜい権力層の脱北があるくらいだろう。北韓政権の道具として利用されてきた彼らに対する果敢な赦免策を用いれば、大量脱北は起こらないと思う。北韓の土地は北韓住民にのみ払い下げるなどの優遇策を導入することも、混乱を防ぐ方法だ。離散家族再会のような人道的次元の往来を許し、北韓地域を5年か10年間経済特区にするシステム構築などが必要だ」
金正恩政権の前途をどう見ますか。
「すぐに崩れてもおかしくない状態だ。北韓政権が長くないというのは、ほとんどの人が感じている。金正恩は絶対権力者に見えるが、実はそうではないと思われる。張成澤粛清事件を見ても、過去と大きく異なっている。露骨で厳しく、急激だ。政権が不安定になっているようだ。人類史上、住民が離反した1人独裁体制が長く続いたことはない。毛沢東の言葉のように、魚は水があってこそ生きられるのだが、北韓には水がないので長続きしない」
北韓で今急変事態が起きた場合、韓国は統一の機会を掴めるでしょうか。
「可能だ。今までは準備が整っていなかった。しっかり準備すれば、試行錯誤を減らせる。準備が足りなければ、逆に多くなる。私たちの能力なら可能だと思う。6・25戦争から3年半で全土が廃墟になったが、わずか一世代で奇跡的な経済成長を成し遂げた。その経験が生きている。韓国経済がどれだけ状況が悪くても、世界的な観点から見れば、まだ健全だ。企業もそれだけの力がある。統一すれば外部からの投資もあるだろう。経験もあり、インフラを作る能力もある。チャンスを逃すはずがない」(おわり)


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