北韓 日本との関係改善に活路

韓国へのゆさぶりにも
日付: 2014年08月15日 00時00分

拉致被害者5人が帰国した02年(写真下)以上の数が帰ってくるとの期待がある
 北韓が今、一番期待しているのが日本との関係改善だろう。日朝外務省局長級会議が2012年11月以来、約1年半ぶりにストックホルムで開かれたのが今年5月。その2カ月後には北京で、外務省の伊原純一アジア大洋州局長と宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が再び顔を合わせた。
北韓側は、域内にいる全日本人を対象に安否調査を行い、生存が確認できた人を返すため、特別調査委員会を設置。それを受け、日本政府は船舶や人の往来などを制限していた独自制裁を解除した。
日朝は国交正常化まで視野に入れ、交渉を行っている。韓国や米国は交渉を静観しているが、国際的な対北連携が乱れることへの懸念は表明している。
日本政府はすでに、拉致被害者の帰国に備えて拉致被害者支援策をまとめた。与党は秋にも支援法改正案の提出を決めている。一部メディアでは北韓当局が残留日本人の子や孫に接触していることなどが報じられており、一部には数百人規模の帰国が実現するとの見方がある。
仮に大量の日本人が帰国した場合、世論によっては一気に日朝国交正常化に向かい、さまざまな形で対北支援が日本から渡ることになる。経済状況が逼迫している北韓にとっては、恵みの雨になるだろう。
北韓にとっては、日本との関係改善は韓国への揺さぶりにも使える。
9月に開幕する仁川アジア大会を前に、北韓は選手の派遣を検討している。7月17日に板門店で開かれた南北実務協議で、北韓側は選手団と応援団をそれぞれ350人ずつ派遣する意向を伝えた。協議の場で北韓サイドは、元山港に停泊中の「万景峰92号」を仁川港に回して応援団の宿泊施設として使用するという案も提示した。
協議に先立つ14日、労働新聞は韓国政府の対北制裁措置(5・24措置)を解除するよう主張した。同措置は南北の交流を原則的に禁じており、その解除がなければ選手を派遣しないという内容だ。北韓船舶の済州海峡通行も禁じられているが、万景峰号は済州海峡を航行予定だという。
日本が対北外交で成果を挙げれば、当然韓国も、という期待は韓国内で高まる。韓国政府にとっては、5・24措置を解除するか頭を悩ませるだろう。
韓国は現在、日本との関係も北韓との関係も進展はない。韓日外務省局長級協議が7月23日、約2カ月ぶりにソウルで行われた。協議は慰安婦問題や徴用工訴訟、日朝関係などに及んだが、具体的な成果はなかった。時を同じくして舛添要一・東京都知事も訪韓し、朴槿惠大統領に会ったが、韓日首脳会談の話はなかったという。韓日関係の悪化に北韓がつけ入る可能性は十分にある。


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