洪 来年は韓日国交正常化50年になる。去年はドイツとフランス間の基本条約(エリゼ条約)50年の年だった。20世紀前半までドイツとフランスがどれほどたくさんの戦争をしたのか。なのに、両国は東西冷戦40年を経て、EUというヨーロッパ大陸の結合を成し遂げる中心になった。エリゼ条約と比較して、韓日両国は基本条約締結から50年を迎え、なぜこの有様か。やはり、自由民主制の核心ともいわれるキリスト教文明の価値共有のような精神が欠けているためだろうか。
李春根 学者たちの論争の主題だ。自由民主陣営という意味の「西欧」(The West)と捉える戦争と平和の観点を超え、いまや欧州は1000年の平和の時代が到来したと思っている。アジアが本当に発展するためには、アジア版の「西欧」が必要だ。別の観点では、ヨーロッパは集団安保体制が機能した。規則に違反した者は集団が制裁するという原理だ。中国を抑えるため、アジアでは世界大戦級の戦争のような危機感がないと難しい。アジアの平和観はヨーロッパと違って儒教的だ。西洋人は対等であるとき平和が来るとみなすが、東洋人は相手が自分に弱者であると認めてこそ平和が来ると考えがちだ。西洋を生々しい権力的側面から見る人は、米国が抑えているからヨーロッパの平和が維持されると見ている。
李江湖 同意する。米国を抜きで考えるとEUは消える。ドイツはフランスとロシアの間で生存せねばならない。複雑な構図だ。今は昔のように奇襲戦争ができないので、戦争の可能性は大幅に減少した。文明化が進んで暴力の指数は低くなるが、戦争がなくなるというのはやはり夢だ。
洪 科学技術の発展、相互依存の深化、情報化、グローバル化などの要素を勘案しても戦争はなくならないだろうか。
李春根 人間の戦争本性は変わらない。国がなぜ戦争をするのか、アテネ時代から恐怖心と名誉のためといわれていた。東西冷戦の60年間は大国間の戦争がなかった最も長い平和期だった。国家という組織が残る限り、戦争はなくならない。日本は、特別な外交政策もなく、戦略もない国といわれるが、安倍総理は愛国という概念に焦点を合わせているようだ。日本は米国にアジアの英国のような役割を提案していると見られる。ライシャワー教授は、韓国人と日本人の血の距離が全世界で最も近いといったそうだ。英国とフランスよりはるかに近いという。こういう”血の距離”が近い国民同士が反目するのは情けない。
李江湖 日本が戦略的に行動する国とは思わないが、安倍総理は森は見る目を持っていると思う。韓国・韓国人を利用して、崩れかかっている日本社会を刺激しているのではないか。日本は韓国を脅すのではなく、怒らせているのだ。ところが、日本の立地は結局、米国にかかっている。
洪 韓国は第2次世界大戦後、植民地から解放された新生国家の中で共和制を定着させた模範生だ。李承晩と朴正熙大統領は、自分がやらないと国が持たないと思い命をかけて仕事をした。ところが、第6共和国(88年)以降の大統領たちは任期をエンジョイしたように見える。外遊も修学旅行に行くように感じられることが少なくない。なぜ韓国だけが国民1人あたりの所得が2万ドルを超えて10年以上も経つのに3万ドルに上れないのか。
李春根 個人の自由の拡大の側面から見れば、韓国の自由化は確実に達成された。だが、自由に伴う責任は見られず、万人に対する万人の闘争が繰り広げられている。自由ではなく放縦だ。全教組の教師は学生に権利ばかりを強調し、責任は教えない。絶対にそうなってはならないのに、韓国社会の極端な自由とポピュリズムのため、外交安保という国家政策までできなくなる。民主化には成功したのに、先進国にはなっていない。だから2万ドル時代から3万ドル時代になるのに、あまりにも時間がかかっている。
李江湖 韓国は貿易立国なので、国際社会から信頼を失わないよう注意すべきだ。そして何よりも、北韓解放をこれ以上遅らせてはならない。
洪 今日の韓国を作った世代が、青年期の進取の気性を忘れ、ポピュリズム政策のわずかな手当てにこだわるのを見るのは悲しい。韓国の未来は北韓という要素をどう生かすのかにかかっていると思う。北韓を解放し、北の住民に自由と安全を提供し、ともに未来を開いていく姿勢が必要ではないか。
李春根 そういう発想こそ、まさに韓国だけが持っている大戦略になりうる。韓国は非ヨーロッパ文明圏の中で民主主義建国革命を成功裏に進めてきた唯一の国だ。万難を乗り越えて北韓を解放することで建国革命を完遂すべきだ。(終)