日本政府は5月29日、北韓が拉致被害者や拉致された疑いがある「特定失踪者」を含め、全日本人の安否を確認することに合意したと発表した。日朝は28日までスウェーデンで外務省局長級協議を開いており、その結果としての合意だ。
対象には北送事業で北に渡った元在日朝鮮人の日本人妻も含まれた。生存者がいれば帰国させるという。
日本側は、北韓が調査に着手した時点で日本独自の制裁を段階的に解除する。具体的には、現在禁じられている人的往来、送金、北韓船舶の入港の解除だが、菅義偉官房長官は、貨客船・万景峰92は船舶に含まれないと明言している。また「適切な時期に」人道支援も行われるが、国連決議に基づく制裁(核・ミサイル関連の物資やぜいたく品の搬入など)は解除しない方針だという。
安倍晋三首相は29日、記者団に「すべての拉致被害者のご家族がご自身の手で、お子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない」と語った。かねてから拉致問題解決を「最重要課題」と位置づけてきた首相の決意が表れた一言だった。
一方、北韓が拉致被害者の調査に着手し、制裁解除を取り付けた段階で、不誠実な対応をとることへの憂慮はある。先代の金正日時代、北韓が提出した「横田めぐみさんの遺骨」が偽物だったように、生存者を「死亡」という可能性もある。
こうした懸念に対して菅官房長官は30日、北韓の対応次第では、制裁解除後も再び制裁を科す可能性を示唆。また、再調査についても「せいぜい1年以内」と時限を設定した。
日本人拉致問題については、02年に5人が帰国して以降、大きな進展はなかった。08年に、それまで「拉致問題は解決済み」としてきた北韓が態度を変え、再調査に合意したが、日本の首相交代などで実行はされなかった。