国連人権理事会は3月28日(現地時間)、ジュネーブで北韓の人権侵害を非難する決議を採択した。決議案は国連安全保障理事会に対し、人権侵害に関与した個人の責任追及を検討するよう求めている。
「人権侵害に関与した個人」とは金日成・金正日・金正恩とその側近、暴圧機構のことだ。金日成と金正日はミイラになってしまったが、金正恩は現在進行形の北韓の人道犯罪に対し、一番重い責任を持つ。
その金正恩らの責任を「国際的な刑事司法の枠組み」で追及するように決議案は促している。「国際的な刑事司法の枠組み」が、国際刑事裁判所(ICC)を指すのは明白だ。
ICCへの付託には国連安保理の決議が必要だが、拒否権を持つ中国とロシアは28日の採決で反対に回った。この2国が拒否権を行使する可能性は高い。
人権理事会の決議案は、日本と欧州連合(EU)が提出した。そのサポートに回ったのが韓国と米国だ。こうした関係国が中心となり、中露に国際的な圧力をかけていくことが課題となる。その過程では韓半島問題の当事者である韓国の役割が、非常に重要だ。
朴槿惠大統領は3月25日(現地時間)、オランダのハーグで日米と3カ国首脳会談を行った。
会談では北韓の核問題が議題になったが、人権問題も重要な課題だ。日本とは軍慰安婦の問題などが関係改善の障壁となっているが、中国に逃げ込んだ脱北女性が、人身売買の対象になっている事実からも目を背けてはならない。70年前の人権蹂躙は追及するのに、なぜ現在進行形の人権侵害については黙っているのか。
韓日米の首脳会談前日には、韓中首脳会談が行われた。習近平主席は北韓の核保有については断固として反対の立場と述べたが、北韓の説得については「現在の中国側の方法で努力している」と表現した。
「中国側の方法」で成果が出たことがあっただろうか。北に核を放棄させるための6カ国協議は、実質的な成果を生み出していない。それどころか北韓に核開発のための時間を与えただけだった。そして北韓は3月30日、4回目の核実験、それも「新形態」での実施の可能性を示唆している。
韓半島の統一についても、習主席は「自主的平和統一」を支持すると表明した。「自主的平和統一」とは、韓米同盟の排除を意味する。
韓中首脳会談では北韓の人権問題についても話し合われたそうだが、朴大統領は中国の脱北者対応に抗議することはなかった。現状の韓中関係では、中国の態度を変えることなどできないということに韓国側は気づくべきだ。
対北問題については、やはり今までどおり、米国と日本が重要なパートナーになる。北韓は今もミサイル開発や核武装を進めている。これに対して韓国は国防予算の削減や兵員の縮小など、現状に逆行している。今のままでは韓国主導の自由統一は難しい。
4月中にはオバマ大統領の訪日・訪韓が予定されている。3月の韓日米3カ国首脳会談と4月の韓米首脳会談を契機に、韓日首脳会談が早期に開かれることを期待したい。
日本側も、韓国と共同戦線を張ることが、北韓への圧力、ひいては拉致被害者や元在日帰国者を取り戻すことにつながると確信すべきだ。
米国は、中国の台頭によって起きている東アジアの国際秩序への新たな挑戦に対し、韓国や日本との同盟強化で対応しようとしている。韓日両国は歴史認識を問題視しているが、来年で50年となる韓日国交正常化によってもたらされた成果を、それぞれの立場で再確認しなければならない。
米国とともに、自由民主主義と市場経済という価値観を共有する韓日は、約2年にわたって開かれていない2国間の首脳会談を早急に開くべきだ。歴史認識が問題となっているが、国が違えば歴史認識も違う。両国ともそれを認めて関係を改善し、米国とともに中国やロシアの説得に力を注ぐことが重要だ。