北、ミサイル発射で脅しと挑発

迎撃困難な多連装ロケット 
日付: 2014年03月05日 00時00分

 2月21日に北韓が東海(東海=日本海)に向けて発射した飛翔体が、当初発表された短距離弾道ミサイルではなく、迎撃が極めて難しい多連装ロケットである可能性が濃厚になった。その後も北韓はミサイル発射を行っているが、韓国側は特に抗議などは行っていない。南北離散家族再会などで友好ムードを高めてきた北韓だが、一転して全面戦争にもつながりかねない挑発を韓国にしかけている。

 韓国軍当局者によると、2月21日に北韓が江原道の元山から発射したのは、300ミリの大口径新型放射砲(多連装ロケット)だった模様だ。韓米の軍当局が「KN―09」と名付けたこの多連装ロケットは、中国製で改良された放射砲がモデルとみられ、それをベースに計算すると、韓国に大きな脅威が迫っていることがわかる。
 「KN―09」は射程距離が180キロメートル以上になると推定され、運搬用のトラックで4台まで同時に運べる。休戦ライン付近に展開すれば、韓国中部の大田まで届く計算だ。38度線からソウルに着弾するまでの時間は最短で約30秒。京畿道にある米軍基地までも1分足らずだ。
 弾頭に積載可能な重量は最大で150キログラム程度。今のところ核弾頭は搭載できないが、容易に移動・展開ができ、一度に数千発のロケットを発射可能だ。北韓は昨年5月にも同タイプの放射砲の試験発射を行っており、放射砲の実戦配備は間近との見方が強い。
 韓国軍は北韓軍に対して先端兵器を持っているため優位に立っているといわれるが、北韓側は韓国が保有しない核兵器などの「非対称戦力」で韓国を上回る。短距離ミサイルなどは迎撃が難しく、放射砲に対しては迎撃する手段を持っていないのが現状だ。また、導入計画もないという。
 最初の発射があった21日、約3年ぶりの南北離散家族再会事業が行われていた。その後も事業の継続が協議されている。こうした「友好ムード」を壊したくないのか、「韓半島信頼プロセス」のためなのか、青瓦台や韓国政府は抗議すらしていない。
 北韓は韓米合同演習が始まった2月24日以降の27日と3月3日にも発射を強行。友好ムードを演出しつつ脅しと挑発を行うのはいつものパターンだが、強力な武器を手にした北韓の脅威は高まっている。


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