望鄕敬慕祭での柳長官

　北韓が１月１６日、対南融和策である、いわゆる「重大提案」を発表した後、実際的な措置は取らずに沈黙している。提案といえそうなものを挙げるとすれば、今年９月に仁川で開かれるアジア大会に男女のサッカーチームを派遣するという発表程度だ。
　しかし、西側を相手にした外交攻勢は積極的に展開している。マスコミとの接触を極度に避けてきた北韓の外交官が、ニューヨークや北京、ロンドンで相次いで記者会見やインタビューを行い、２９日には池在龍・駐中北韓大使が北京の北韓大使館を韓国の記者らに公開するという破格の振る舞いまでやってみせた。
　韓国は北韓の「重大提案」以来、離散家族の再会実施を要求している。離散家族とは１９５０年の６・２５戦争（朝鮮戦争）で南北生き別れになった肉親のことだ。
　しかし北韓は、１月２７日に韓国が離散家族再会を提案してから１週間以上も沈黙を守ってきた。韓国統一部の柳吉在長官は１月３１日、京畿道・坡州市にある臨津閣望拝壇で開かれた望郷敬慕祭で、「南北間で解決すべき多くの問題のうち、離散家族の問題ほど喫緊かつ切迫した事案はない」と述べ、「北韓は言葉では『わが民族同士』と強調しながら、民族第一の要求をこのまま霧散させようとするなら、誰も北の真正さを認められないだろう」と批判した。
　韓国内の離散家族は、昨年末の時点で７万１４８０人。そのうち５３％である３万７７６９人が８０歳以上であり、９０歳以上も１１％に相当する７９５０人にのぼる。昨年の韓国の平均寿命が８０歳であることを勘案すれば、離散家族の生存者の６４％がそれ以上の年齢に入っており、生きて家族の再会を待ちわびているのだ。
　昨年９月には離散家族再会行事の直前に９１歳の高齢者が死去した。北韓は直前、離散家族再会を無期延期にしていた。北韓が離散家族の再会を許可する代わりに、主な外貨獲得源の一つである金剛山観光の再開を韓国に認めさせようとしたためだ。北韓は今回も、金剛山観光の再開や食料・肥料支援などの対北支援を引き出したいという下心があると観測されている。
　韓国政府は１月２７日、再会の日程を２月１７日から２２日まで、場所を金剛山にすると提案した。北韓が難色を示している韓米合同軍事演習「キー・リゾルブ」が２月末に行われる予定であるため、その前に済ませてしまおうということだ。
　北韓は３日、離散家族再会の実務接触を提案。南北は４日に実務接触の代表者名簿を交換し、５日に会う予定だ。宿泊施設や暖房などの設備点検に２週間ほどかかることから、この機を逃せば再会は中止になりかねない。
（ソウル＝李民晧）