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日本時間の9月27日、ニューヨークで韓日外相会談が開かれた。韓国の尹炳世長官(左)は日本に歴史認識を改善するよう求めたが、岸田文雄外相は「解決済み」と回答。首脳会談への言及もなかった |
朴槿惠大統領の外交・安全保障分野における公約には「米国と中国との調和のとれた協力関係を維持するとともに、北東アジアにおける対立については国益の観点から断固対処する」とある。大統領就任後に初めて行った首脳会談の相手は米国。国賓待遇での訪米だった。
韓米首脳は5月7日の会談で、同盟60周年を迎えた両国関係を包括的・戦略同盟からグローバルーパートナーシップに格上げすることで合意。対北問題でも「抑止と対話」の原則で臨む方針を確認し、強固な韓米関係を内外に示した。ただ、「韓半島信頼プロセス」、「北東アジア地域の平和協力構想」、そして韓米同盟が「全人類の幸福に寄与する」という目標とビジョンは、観念論としては言えても、当面の実践と効果は期待しづらい。特に韓半島信頼プロセスは、北韓が自ら変化することを前提としており、北韓が応じなければ効果はゼロだ。原子力協定の改定問題、韓米連合軍司令官から韓国軍への戦事作戦統制権移管問題についても、具体的な結果を出せず、立場の相違が浮き彫りになった。
朴槿惠大統領はその後、6月末に中国の習近平・国家主席と会談。ここでも中国から「韓半島信頼プロセス」への支持を引き出し、「中国は韓民族の念願である韓半島の平和統一実現を支持する」との合意を取り付けたものの、統一の形についての言及は一切なかった。
習主席は韓中首脳会談後の会見で、統一問題について「中国は南北関係を改善し、和解と協力を実現し、最終的には自主的平和統一を実現することを支持する」と述べた。中国は以前にも「自主的解決」という表現を用いたが、「自主的」という表現には韓国が米国に依存している状態から脱しなければならないというニュアンスが込められている。米国の動きをめぐり、統一に際して中国が足を引っ張ることになるという懸念は拭えない。
朴槿惠政権の外交で過去の政権と最も異なるのが、米国に次いで慣例的に行われていた日本の首相との会談が行われていないことだ。朴大統領は米国のバラク・オバマ大統領に次いで中国の習近平国家主席と会談。11月13日にはロシアのプーチン大統領が韓国を公式訪問し、ソウルの青瓦台(大統領府)で朴大統領と協議した。
その間の9月に朴大統領は、ハノイでベトナムのチュオン・タン・サン国家主席と、10月にはインドネシアのユドヨノ大統領と首脳会談を開催。プーチン大統領の訪韓前にはベルギーで韓欧首脳会談を行っている。
韓日首脳会談が実現しない理由についてある専門家は「朴大統領は、『親日派の高木正雄(故・朴正熙大統領の日本名)の娘』と左派メディアから揶揄されるのを恐れ、意図的に日本と距離を置こうとしているのではないか」と指摘する。確かに朴大統領は、大統領選挙当時から一部で「独裁者の娘」などと非難されてきた。今も反大統領派は「維新独裁の復活」などとネガティブキャンペーンに「親日」の烙印を利用している。
また、外交分野に関しては深く考えておらず、尹炳世・外交部長官に任せているのではないかとの指摘もある。尹長官は「大陸指向」といわれ、日本よりも中国との関係強化を望んでいるといわれる。
韓日関係の悪化は、日本側にも問題がある。韓国の峨山政策研究院が8月末に行った世論調査によると、回答者の58%が、韓日首脳会談開催が「必要」と回答。反対は35%だった。日本を訪れる韓国人も前年比で増加している。にもかかわらず、日本では「韓国は反日国」という見方が根強い。
日本の政界では、「韓国とのパイプがない」という声が聞かれる。専門家は「基本的な理念を共有する相手ではなく、時の韓国政権の有力者と”風見鶏外交”を行ってきたツケだ」と指摘する。これは韓国も同様だが、「基本的価値を共有する」とことさら強調する両国の政治家にとって、何とも情けない現実といえよう。
【朴大統領が行った周辺国首脳との会談】
<5月7日 オバマ米大統領>
韓米同盟をグローバルパートナーシップに格上げ。原子力協定の改定や韓米連合軍司令官から韓国軍への有事作戦統制権移管問題については、具体的な進展なし。米議会での演説では日本の歴史認識に苦言
<6月27、28日 習近平・中国国家主席>
韓半島の非核化実現や中国の韓半島統一実現支持、韓中日3カ国の協力強化などを盛り込んだ「韓中未来ビジョン共同声明」を発表。中国から韓国主導の南北統一に対する支持もとりつけた。
<11月13日 プーチン露大統領>
ロシアのハサンと北韓の羅津を結ぶ物流協力事業で、鉄道の改補修や羅津港の改修事業に韓国企業が参入する内容の覚書を交わした。北の核開発については、「核保有国の地位を確保できない」と反対した