「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などによるヘイトスピーチデモ(差別憎悪の扇動)が東京や大阪など全国各地で繰り返されている。そのような中で学校法人京都朝鮮学園が、在特会を相手に街頭宣伝の中止を訴えていた裁判の判決が7日にあった。
京都地方裁判所(橋詰均裁判長)は、京都朝鮮第一初級学校(京都市南区)周辺で街宣活動(2009年~2010年3月の間に3回)を行った在特会会員らに対して街宣活動の禁止と1226万円の損害賠償支払いを命じた。
今回の判決結果について、民団傘下団体である在日韓国人法曹フォーラム副会長の李宇海弁護士は「人種差別撤廃条約を使って民法の不法行為における損害賠償額を増額させたことが最大の眼目である」と評価した。さらに「(在特会が行う街宣活動)には公益目的がなく、ただの隠れ蓑にすぎないと認めたことは大きい」と指摘する。
判決では、ヘイトスピーチは「人種差別」であり、民法上の「名誉毀損」「威力業務妨害」にもあたり、損害賠償の対象にもなるということが認められたという。また「有形損害」(物を壊される被害)だけではなく、「無形損害」(言葉の暴力による被害)を認めた点も注目されている。
今回は朝鮮学校で起きた事件だった。韓国学校では今のところ同様の事件は起きていないが、将来的に韓国学校で事件が起きたとしても、京都地裁判決による「名誉毀損」や「威力業務妨害」を使って訴えることも可能になった。
また新大久保や鶴橋などで行われているヘイトスピーチデモに対しても、差別対象が特定されることになれば、京都地裁判決を使って裁判を起すこともできる。さらにインターネット上における差別的な書き込みに対しても同じだという。
法曹フォーラム事務局次長の呉奎盛弁護士は「今回の判決は損害賠償額を認定するにあたり、人種差別がなされているという点が評価されていることは非常に意義が大きかった。この流れを今後も継続させて、ヘイトスピーチをなくすための運動に取り組むべきだろう」と話した。
今回の判決では日本政府が批准している人種差別撤廃条約が使われた。しかし日本政府は同条約2条1項(人種差別を禁止し終了させる措置)と6条(裁判所を通じての人種差別に対する救済措置)の項目を留保し続けている。
李弁護士は「人種差別撤廃条約の留保部分を撤回させていくことも、今後は大事だ。そうすれば国会に立法義務が生じて、ヘイトスピーチも犯罪になる法律ができるようになる」と話した。
李・呉両弁護士の個人的な見解としては、人種差別撤廃条約の中の罰則条項を日本政府に批准させる運動が必要で、今後は法曹フォーラムとしてもこの運動に取り組みたい考えだ。
今のところ、民団などは、在特会などのヘイトスピーチに対しては、怒りを覚えつつも、挑発に乗らない方が大人の対応であり得策であるという考えのようだ。(<下>に続く)