統合進歩党の国会議員・李石基が内乱陰謀容疑で逮捕された翌日、検察総長・蔡東旭が内縁関係にあった不倫相手の女性との間に隠し子がいるという事実が朝鮮日報で報じられた。蔡東旭の最初の反応は、強い否定ではなく、「身に覚えのないことだ」というものだった。彼は、自分の私的スキャンダルに対してまったく説明せず、検察組織を総動員して、朝鮮日報を圧迫、沈黙させようとした。
蔡東旭は、互いに知り合いであることを女性が認めても、法務部の監察にも応じず、大統領に逆らってまで真相究明に応じなかった。逆に、朝鮮日報に訂正報道を要求しながら、野党とマスコミを巻き込んで政治問題化を試みた。だが結局、蔡東旭の内縁である林氏の家に住み込みで働いていた李氏の証言によって、蔡東旭と林氏の裏の顔が明らかにされた。
蔡東旭は、真相調査によって違法性が確認されれば当然罷免されるべきだった。政局運営にダメージが残ることを懸念した大統領が辞表を受理したが、今回の蔡東旭事態に対する徹底した反省と整理は必要だ。
まず、国家の起訴権を独占している検察の総帥であり、国会の人事聴聞会で任命適合の可否を検証する権力の核心人士が、公職社会では許されない内縁の妻と婚外子を隠してきたという事実は、国会の人事聴聞会(2000年6月から導入)の運営に深刻な問題があることを意味する。
蔡東旭事態を通じて、民主党と従北勢力、マスコミ、左派市民団体らの正体も再確認された。蔡東旭の退任を政治的に利用しようとした野党と従北派の行動は別に指摘するとして、まず、客観的報道を本分とするメディアの不可解な態度を指摘せざるをえない。ほとんどのメディアが、事実報道を捨てて検察や野党の言い分を忠実に伝えたのだ。
いわゆる「市民団体」の正体もわからない。女性がらみのスキャンダルといえば、朴大統領の訪米時に現地公館勤務の女性にセクハラを行った尹昶重・前青瓦台代弁人事件が記憶に新しい。当時と蔡東旭事態を比較すると、蔡東旭に不倫関係の女性と隠し子がいたことに対する市民団体や野党などの反応はあまりにも対照的だった。尹昶重のセクハラを猛非難した女性団体は、蔡東旭の不倫問題については沈黙している。
民主党と従北左派はなぜ、糾弾すべき蔡東旭を庇護するために総決起したのか。最大の動機は、蔡東旭が民主党と従北勢力が行っている朴槿惠当選無効闘争のための名分と証拠を提供しうる人物だからだ。
蔡東旭は、国家情報院の選挙介入の立証などを目的として、検察力を使用した。大統領選挙に国情院が介入した物証を確保するとして、国家情報院の家宅捜索までしようとした。国家情報院の無力化を試みたわけだ。
後に伝えられた話では、民主党は蔡東旭に対する人事聴聞会の前から、蔡総長に不倫相手と隠し子がいる事実を把握していた。それでいながら意図的に指摘しなかったという。
つまり、民主党と従北勢力は、自分たちの手先になった検察総長を積極的に利用し、彼が失脚しないように必死に庇護したのだ。李石基ら従北勢力を国会に引き入れ、国家情報院の無力化を推進する民主党は、蔡東旭問題においてさらに厚顔無恥な態度を見せたといっていい。
一部には、蔡東旭事態のため李石基問題がかすんでしまうことを憂う反応もあるが、従北勢力を庇護し増長させた蔡東旭こそ内部の敵といえる。その蔡東旭の不貞行為が明らかになったことにより、従北勢力を排除する主体となるべき検察権を浄化させるきっかけとなった。これはもっけの幸いだった。蔡東旭が隠し子問題で辞任しなかったら、検察総長による「政治的クーデター」が起きかねなかっただろう。
一方、ソウル中央地検は2日、盧武鉉と金正日の会談録が行方不明になった経緯を糾明し、破棄された会議録の復旧を発表。蔡東旭によって失墜した検察の威信と信頼を挽回した。
検察発表とメディア報道を総合すると、第2次南北首脳会談の議事録が国家記録院に存在しなかった経緯は、金正日に会ったときに自分が犯した致命的なミスに後に気付いた盧武鉉元大統領が、会談記録を修正するように指示したことが発端だったようだ。盧元大統領はNLL放棄などが自分の国家に対する反逆行為の証拠にならないよう、修正した会議録も後に廃棄するよう指示したことが判明しつつある。
この問題は、そもそも北韓が昨年秋、韓国の大統領選挙に介入することを目的としてNLL問題を取り上げる過程で表面化したものだ。盧武鉉政権の残党は、これまで真っ赤な嘘で自分たちの反逆行為を徹底的に隠し、むしろ責任を李明博や朴槿惠政権に転嫁するという、卑劣なことを平気でやってきたのだ。
大統領記録物の捏造と破棄の責任は、一次的に盧武鉉元大統領にある。反逆行為を犯し、それを隠すために記録を捏造・破棄した者を大統領として扱うべきだろうか?
いずれにせよ、彼はすでに死んだ。しかし、盧武鉉と一緒に歴史を捏造し、国民を欺いてきた共犯者がいる。民主党は、盧武鉉路線を継承すると宣言しており、当時大統領秘書室長だった文在寅は、この問題においては盧武鉉と”共犯関係”である。
韓国社会の成長を拒む最大の敵が政争だ。今、韓国の政治は政策や路線を基準とした対立や闘争を行っているのではない。民主党と従北勢力が、民主主義の前提となる常識と良心や、国民情緒を破壊している。
蔡東旭と文在寅と民主党と従北勢力は、なぜ厚顔無恥になるのだろうか。それは「陣営論理」があるためだ。彼らにとってはただ「陣営論理」、つまり味方なのか敵なのかが、思考と行動を決定する唯一の基準だ。
文在寅は、自らが公言してきたとおり政界を去るべきだ。蔡東旭については、これまで検事として彼が捜査してきたすべての事件を全面再調査せねばならない。
政府は、政治的考慮を排除して蔡東旭と文在寅と民主党に対して法的、政治的責任を追及すべきだ。大韓民国が正常な国家になるためには、これ以上従北集団に振り回されてはならない。彼らに惑わされる国民を生まないためにも、政府は対策を急ぐべきだろう。
(洪熒・本紙論説主幹)