脱北者の10人に1人が「脱南」

経済的な理由から難民に偽装して欧米に・・・
日付: 2013年10月09日 00時00分

 現在までに韓国が受け入れた脱北者は2万5000人を超えた。しかし、そのうちの10人に1人が韓国外に住んでいることが明らかになった。
 これまで脱北移住民として登録された者のうち、第3国に住んでいるか、北韓に戻った脱北者は少なくとも2000人。国連難民機関(UNHCR)の統計によると、昨年末の時点で北韓国籍の亡命申請者は合計2137人となっている。
 脱北難民が多く住んでいる国のうち、最多は英国の619人。次いでドイツ(138人)、カナダ(119人)、ベルギー(61人)の順だった。その多くが韓国経由で入国したと推定される。
 脱北者にとって韓国は、死地を乗り越えてまで定着した第2の故郷のはずだ。それでも彼らが「脱南」を選ぶ最大の理由は、経済的な困窮。福祉制度が整っている西欧の先進国なら、韓国よりも豊かな生活が送れるという期待があるためだ。
 差別も「脱南」の一因だ。
 08年に脱北したパク・ミョンホ氏(47)は、「期待した韓国生活ではなかった」と話す。「中国の朝鮮族にも劣る扱いを受けた」と屈辱を感じる脱北者が多いとのことだ。
 自由北韓放送の金聖玫代表は、「制限的資本主義を経験した朝鮮族の方が、そうではない脱北者よりも韓国に容易に適応できるようだ」と話す。北韓でのキャリアは通用せず、肉体労働に従事することが多いが、体力がもたずに長続きしないことが少なくない。
 「脱南」は意外に簡単だという。観光客を装って入国後、現地の難民当局で難民申請をするのだ。人権弾圧国として悪名高い北韓からの脱出者だとアピールすれば、被害者として認められやすいという。ただし、韓国の旅券と身分は隠し、北韓から直接脱北したと偽装しなければならない。
 ”人気”の亡命先は英国とカナダだ。英国では難民審査期間中にも生活支援を受けられる制度が整っている。カナダは韓国からビザなしで入国でき、脱北者が夢に描く米国とも隣接しているのが人気の理由だ。
 しかし、最近はこれらの国への亡命が難しくなった。規制が強化されたためだ。
 英国は昨年から北韓出身の難民申請者に対して韓国政府の身元調査を依頼している。韓国政府からの恩恵を受けた者は、難民の資格を受けられなくなった。カナダも審査を厳格化しており、以前は5年以上の滞在期間をもらえたが、今は通常3カ月から6カ月の短期滞在許可しか与えられないという。実際、今年上半期カナダで難民と認定された脱北者は、前年同期の約20%に急減した。
 こうしたことから、脱南先はベルギー、デンマーク、ノルウェーなどに移っているという。
 では、「脱南」した人たちは幸せな暮らしを送っているのだろうか。これについて脱北者たちは、現実には韓国よりもよくないという。差別されるのは変わらず、大金を稼げるとの期待は裏切られ、生活していくだけでギリギリだという。言葉や文化の壁もある。
 これに対し、韓国では言葉が通じる上に文化的にも近く、適応が容易だ。国内では「逆差別」との声が出るほど、政府は脱北住民の定着支援体制を整え、生活費や住宅費などを支援している。
 脱北者の間では、脱南するより韓国に定住する方がより賢明な選択だといわれる。韓国社会に差別や偏見がないことはないが、それよりも言葉と文化の壁の方が大変だという。カナダのトロントには1000人以上の脱南者がいるが、10人中7人以上は再び韓国に戻ることを望んでいる。
  (ソウル=李民晧)


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