今年で65回目の建国記念日を迎えた。1948年8月15日、韓半島史上初めての共和国・大韓民国が誕生した。人的にも物的にもほとんど準備されていなかった条件での建国だったが、建国の父たちは、血と汗と涙で建国事業に邁進した。
大韓民国は非ヨーロッパ文明の中で唯一、自由民主主義の建国革命を成し遂げた国だ。しかも、共産主義・全体主義との厳しい戦いの中で勝ち取った、輝かしい成功だった。もちろん、米国との同盟なしではこの「奇跡」は不可能だった。
ところが、いま大韓民国がおかしい。自由民主主義の危機、国家存亡の危機が忍び寄っている。危機の根源は、1988年にスタートした「第6共和国」(民主化以降の政権)26年間で浸食・進行した国家的左傾化だ。
「内戦状態」の現状
昨年発覚した前大統領・盧武鉉によるNLL(西海上の北方限界線)放棄発言は、憲法精神に反する、“反逆"行為だった。これは致命的な行為であり、それが明らかになった以上、国の安保体制全般の全面点検を急がねばならない。そして、その全貌がほぼ明確になった今、この事態に対する韓国社会の分裂と対立は、通常の対応で収束できる限界を超えている。
休戦中の交戦相手で、韓国の主敵である北韓の核ミサイル実戦配備が秒読み段階に入っているのに、政府は何ら対応措置を講じていない。国家の存立と国民の生存問題を、国際社会が解決してくれるものと思っているようだ。GDPに占める国防費の負担率も世界平均を下回る。正常な国家とは到底いえない。
企業活性化こそ重要
貿易収支は黒字を記録しているものの、現在の韓国経済は停滞し、貯蓄率と企業の投資は信じられないほど落ち込んでいる。税収は減り、国家の負債は増えつつあるのに、役所は依然と大きな政府を目指している。
第6共和国の国会は、自由民主主義という憲法価値を無視した法律を量産してきたが、特に今深刻なのは、社会主義的な路線ともいえる「経済民主化」に偏重していることだ。これでは企業の活性化が妨げられる。生産性を無視し、企業への過度な規制を強化しているのが現状だ。
こういう状況での福祉の拡大は、未来世代に負の遺産を強いる政策だ。大きな政府が国民を幸せにできないことは、ソ連と東欧の社会主義国の破綻により歴史的に証明されたことだ。
今韓国社会は、憲法を守ろうとする国民と、従北をはじめとする憲法否定勢力が衝突している。これはまさに冷たい「内戦」だが、朴槿惠政権も第6共和国の歴代政権のように、この衝突を「国民大統合」という名の「左右合作」で乗り越えようとしている。しかし歴史的に左右合作が成功した例はない。
法治の徹底を
国民統合や社会統合は、憲法に基づいて行うのが法治国家だ。憲法を無視し、無力化しようとする行為は一切許してはならない。「6・15宣言」など、憲法の命令に逆らう政策路線も当然許せるものではない。
第6共和国の歴代政権が、憲法を破壊しようとする勢力を放置し、法治を軽んじてきたことが、今の総体的混乱と停滞と不安を生み出した。大統領は赦免権を乱用し、従北派や一部の追従勢力は「民主化」の名のもとに放縦な振る舞いを繰り返している。
さらに問題なのは、司法府そのものが司法の公正さと権威を放棄し始めている点にある。国家破壊活動犯罪に対する裁判所の確定判決を、再審手続きなしに行政府の一介の委員会が覆し、国家が巨額の補償金を支払っている。
その代表例が康宗憲事件の再審だ。ソウル高裁は今年1月、在日の「北」工作員として有名な康宗憲氏に、再審で無罪を言い渡した。この事件は韓国最高裁へ上告されているが、韓国がまともな法治国家なら、康氏は再審で無罪になることはなかった。
康氏は一度収監されているが、出所後に戻った日本での大韓民国に敵対する犯罪まで追及されるべきだった。ソウル高裁は判決文も公開せず、明々白々な証拠も無視し、「民主化」を隠れみのとして誤った判決を下したのだ。
平壌の労働党の指令に従って、民団破壊などの反国家犯罪において重要な任務に従事した「在日の敵」を、政府・司法府が名誉回復させるなら、司法府は今後民団を断罪するつもりなのか。
韓国の司法府は国民の信頼を失いつつある。司法府と一部メディアは従北勢力におもねり、あらゆる反憲法的な行為と偏狭な民族主義などを増幅させ正当化している。
「内戦」の克服
65年目の建国記念日を迎えるにあたって、私たちは今一度建国理念、つまり憲法精神の原点を心に刻むべきだ。代は変わっても、北韓の前近代的な金王朝は体制を強化している。この状態を一日も早く是正するため、日本でできる具体的な作業に着手すべきだ。
韓国社会と政府が取り組むべき最重要目標は、ダイエットに勤しんでいる南の人々に福祉を拡大することではなく、北韓の同族に自由を与え、飢えから救うことだ。韓日関係の改善より急を要するのは北韓の解放だ。これこそ韓国の「内戦」を回避する唯一の道だ。
韓日関係の改善は、民主制度の発展過程で両国が著しく異なる道を歩んできたことを直視することから始めるべきだ。日本は天皇制を固守しつつ、日本的な自由民主主義を標榜し、大韓民国は建国革命の完遂が至上課題となっている。
韓国の正常国家化は建国革命の完遂が出発点になる。そして終着点は、韓半島から独裁体制を消滅させ、統一を実現することだ。革命は中途で放棄すれば失敗する。大韓民国の建国理念とは何か、憲法精神とはどのような内容なのか、65回目の建国記念日に、考えるべきことは少なくない。