【座談】超高齢社会ニッポン 在日韓国人高齢者の介護は?<2/2>

福祉・介護事業を次のビジネスモデルに 
日付: 2013年07月03日 00時00分

 介護の仕事をしていてよかったと思う瞬間は。
  私はよかったというより感謝しています。1人で身内も子どももいない方に、「あなたが来てくれることが生きるひとつの楽しみになっている。ありがとう」といわれたとき、やってよかったと思いました。
韓基成(ハン・ギソン)
  私は比較的元気な方に福祉用具を提供する仕事をしていますが、ケアマネージャーには悪徳な人が少なくなく、試験も形式的なものです。ケアマネがケアプランを立てるのですが、利益的には7段階の介護度(要支援2要介護5)のうち、重い方が儲かる仕組みです。過去に問題となったのはまだ体力がある人にベッドを貸し付けること。ほんの数カ月で寝たきりになってしまいます。要は、高齢でも元気でいられる方法があるのだから、民団が啓蒙して教えられればといいということ。民団活動に参加する機会を作ることです。
  支部から始めましょう。仕事は待っていてもきません。
  高齢者の人たちの介護支援を支部でお手伝いしようと、中央から強い方針を出してほしい。そうしたら意義もあり家庭訪問しやすいのではないでしょうか。
  少しでもケアや介護に協力したいという気持ちがある人に、介護の勉強をする場を設けてほしいですね。民団が発令すれば、より早くできます。老人ホームに行くときは、明るい服をきれいに着て、白い歯をにこっと見せるだけで喜ぶんですよ。東京の婦人会が老人ホーム訪問で韓国人の部屋だけを訪問していたと聞きました。行くなら入居者の全ての皆さんに分けてあげられるくらいの手土産をもって訪問してほしい。するともっと韓国人の入居者が大事にされます。
 日本政府や社会に望むことも含めて、展望などは。
  総連の名古屋の施設では、介護が不要そうな人も少なからずいて、楽しんでいらっしゃる。民団が施設をきちんと作る形で、日本政府に「言葉やいろんな問題で我々は違うでしょう。専門で看たいので特別に計らってください」といえばOKが出るかもしれません。そのために民団は政治活動もしているのですから、厚生省と話して、専門組織を各県に1つぐらい作ろうと提案すれば、楽しい形の施設ができるかもしれません。
  施設よりは地域です。今後施設を建てるのは、日本の介護保険制度の中では財政的にほぼ無理です。在日のための施設も売りにできる要素は少ない。ただ、日本の介護保険に関わる人たちも在日の高齢化にとても興味をもっていて、今後サポートしていくという姿勢を感じています。
  日本社会も上の方から降りないとだめなんですよ。私がやっているときは国から補助金が出たからやりやすかった。今は出ないので、自分たちが具体的にひとつのものを作ってから日本政府にお願いするべきでしょう。
  在日の人たちの経済基盤である遊技場などがどんどんだめになって行く中、次のビジネスモデルがありません。福祉の仕事は大きく儲からないですが、ちゃんと成り立つビジネスモデルです。ホールなどを活用した介護ビジネスモデルの研究も必要でしょう。
  温泉地の旅館も経営が厳しいようですね。そこに老人ホームを作ればいいなと思っていました。方法はいっぱいありますね。なんとか頑張らないと。

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 金定子(キム・ジョンジャ)1938年生まれ。京都府出身。在日本大韓民国婦人会会長時代に老人ホーム建設を推進。現在、在日女性福祉ネットワーク会長

 韓基成(ハン・ギソン)1953年、愛知県生まれ。愛知大学法学部卒。民団愛知新西支部団長時代にデイケア施設を開設。現在、福祉用具を扱うNOAA代表

 黄晶雅(ファン・ジョンア) 1965年、ソウル生まれ。国際医療福祉大学大学院修士課程修了。現在、介護福祉士として活躍中


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