韓日連帯への課題 思想・価値観の視点③

「朴槿惠は保守」という危うい幻想
日付: 2013年06月05日 00時00分

洪熒・本紙論説委員

 朴槿惠大統領について日本では保守だと思われているが、朴槿惠大統領はそもそも保守とはいえない。
 韓国民が彼女を大統領として選んだのは、最悪を避けるための、「次悪の選択」だった。第6共和国(盧泰愚政権から現在まで)になって6人目の大統領だが、すべて「次悪の選択」だった。4人は軍経験がなく、盧武鉉大統領は軍を忌み嫌った。もし文在寅氏が大統領になっていたら、今年中に北と高麗連邦制に移行するだろうから、そういう悪夢を避けるために、朴槿惠を選択したのである。
 80年代以降、「主思派」といわれる人たちが「文化陣地」やメディアの9割を支配するようになった。その結果、韓国民は知らないうちに洗脳されてしまった。そういう環境で、ぎりぎり朴槿惠大統領が当選したのは、保守系の勝利といえる。湖南(全羅道)地方は左翼勢力が強いが、逆に反共保守も非常に勇ましい。全羅道の反共保守が朴槿惠支持に回ったことで、朴大統領が当選した。
 朴大統領は、戦争中の国の政治家なのに、平壌の金氏王朝と命をかけた戦いをやったことがない。教養書としては主に中国の哲学書類を読んだようだ。つまり観念論的なところがある。
 観念論は共産主義の文化戦略に弱い。朴大統領は「経済民主化」政策を強調するが、これは本質的に「社会主義」の政策である。普遍的な福祉として政府が全国民の面倒を見るという発想は、まさに社会主義的発想だ。
 そもそも「経済民主化」という表現は、共産主義や社会主義に対しての拒否反応を和らげるための表現にすぎない。中身は同じだ。
 朴槿惠大統領は、重要なポストに左翼的思想の人物を配置した。外交部長官の尹炳世氏が「外交の優先順位は米・中・日・ロ」と述べたのは、その反映である。国家安保室長の金章洙氏(盧武鉉政権時の国防長官)、統一部長官柳吉在氏(北韓研究学会長)などは、従北路線の庇護勢力に近いといえる。この人事に対して、韓国の保守派は深刻に憂慮している。
 北の核ミサイルの実戦配置が間近で、停戦協定の破棄を宣言しているのに、朴槿惠大統領は、北に対して断固たる措置を取っていない。世論調査では、韓国民の3分の2が独自の核抑止力を求めているのに、政府と政界は無感覚だ。
 李明博政権の発足当時、従北勢力は街頭デモで抵抗したが、今回は政府組織改編案と長官人事聴聞会に対する国会サボタージュで抵抗した。昨年、重要な案件は6割の賛成によって成立するという「国会先進化法」が成立した。李明博大統領は、憲法違反であるとして拒否しようとしたが、それを通したのが、野党と談合した朴槿惠のセヌリ党だった。
 韓国国会の勢力図は、与党がかろうじて半数を維持できるかどうかであるから、その法律によって何もできなくなってしまった。未曾有の安保危機なのに敵前分裂だ。いま朴大統領に求められるのは、福祉ではなく安保管理能力だ。


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