中国銀、北と取引中止

期待される中国の動き 本気度と実効性に疑問
日付: 2013年05月15日 04時57分

 「表と裏が違う」。中国の対北経済制裁のことだ。最近、中国の国策外国為替取引銀行である中国銀行は7日、北韓の銀行との取引を中止することを電撃発表した。公式声明では「北韓の国有銀行である朝鮮貿易銀行との取引を中止する」としただけでなく、さらに中国当局は、中朝国境地帯で北韓貨物の検査を強化し、対北制裁にさらに鋭いメスを突きつけることも示唆した。
 こうした中国の措置に対し、国内外のメディアの多くは、中国が国連安全保障理事会の対北韓制裁決議案を履行しているという分析を出した。今回取引停止措置が下された朝鮮貿易銀行は今年3月、米国が安保理の対北韓制裁決議案の採択当時、北韓の核兵器とミサイル開発に必要な資金を調達する拠点として注目していた銀行だ。韓国のある新聞は、中国の外交専門家の言葉を借りて「北韓の核危機以来、中国政府が初めて加えた実質的な制裁措置」と報じた。
 しかし、中国の真意は別にあると見られる。表では本格的な対北強硬策をとっているが、実質的かつ具体的な対北支援も同時にしているからだ。中国は対北制裁を発表する直前、北韓に少なくとも20万トンの化学肥料を無償支援。3月に中断した原油の供給も再開した。近いうちに食糧供給も行われる見通しだ。
 肥料は、韓国が北の「戦略物資」と分類する物品で、中国産の肥料は、4月末から北韓全域に配分されている。輸送のスピードは、昨年よりも1カ月以上早いという。
 咸鏡北道出身の脱北消息筋は、「昨年は、協同農場1カ所にせいぜい10トン程度配分されたが、今年はそれより数倍増えるほど豊かだ」と述べた。咸鏡北道地域では肥料の価値が下がり、かつては中国からの肥料1キログラムでトウモロコシ2キログラムと交換できたが、最近ではトウモロコシ1キログラムにしかならないという。この消息筋によると、「太陽節(4月15日の故・金日成誕生日)と前後して、倉庫を開いて穀物を配っている」とのことで、住民の間では、近いうちに中国から大量の食糧が支援されるとのうわさも広まっているという。
 最近注目されているのは、北韓の対中金輸出だ。双方間の金取引は非公式に行われているため、中国税関の輸出入材料統計は捕捉されない。外交安保ラインの元高官は「金正恩が賢くなっている」とし、「中国との金取引でドル不足をカバーしており、輸入品と引き換えに金で解決している」と明らかにした。
 北韓は、昨年の対中貿易で9億6000万ドルの赤字を出したが、その赤字分の一部は金の現物になったと解釈される。北韓政権がドル箱である開城工業団地の閉鎖を辞さない背景には埋蔵されている現物の金があり、中国との水面下の取引を通じて取得したドルもたまっているためではないかという分析も可能だ。
 北韓の金の採取量は年間2トンという主張があるが、そのすべては労働党39号室が管理・監督するため、具体的なデータは外部に漏れ出ていない。北韓の金埋蔵量は900~2000トン程度と推定され、現在の金相場で換算すると、500億~1200億ドルに達する。
 中国湖南省にある湖南緯金投資グループは昨年、推定埋蔵量50トン以上といわれる平安北道の雲山金鉱を北韓と合同で開発すると発表。北韓に30階建ての5つ星ホテルを建設支援するとまで発表した。金をはじめとする鉱山開発権と連携した対北支援が行われているということだ。
 また中国は、北韓の観光収入源としても第1位となっている。北韓は韓国の現代グループから没収した金剛山の観光施設を中国に開放している。中国人客は、2010年13万人、2011年19万人に続き、昨年は約30万人が北韓に観光で足を運んでいる。開発とそれに伴う投資や、観光業は民間レベルのことなので政府とは無関係という主張も成り立つが、広義の対北金融支援の手段ということはできる。
 中国が行っている様々な“ステルス対北支援"は、同国が対外的に示している対北制裁とはかけ離れたもので、制裁の効果を半減させるものでもある。それだけでなく、北韓を重視する中国の政策に全く変化がないことを示唆するものともいえよう。結局、中国の姑息なやり方が最大の障害なのである。
(ソウル=李民晧)


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