南北交流の“最後の砦"とみられてきた開城工業団地が閉鎖の危機に直面している。ほとんどの入居企業は、3日に韓国から北韓への越境が制限された後、材料の搬入が行えないため生産に支障をきたしている。
統一部の柳吉在長官は5日、ソウル駐在の外国メディアとの懇談会で、「(北韓の通行制限のため)これ以上の生産活動が困難になれば、その全責任は北韓にある」と明らかにした。柳長官は「現時点では(北韓が)本当に開城工団を閉じるつもりなのかわからない」とも述べている。
韓国内では、開城工団を閉鎖すべきという意見と、南北平和の象徴であるから何とか維持すべきとの主張が対立している。
閉鎖支持者は、北韓が開城工団の韓国企業関係者を人質にとった場合の適当な対応方法がない上、開城工団は北韓の権力者の“ドル箱"として利用されてきたので閉鎖するのが賢明だと力説する。韓国自由連合の金成〓代表は、「開城工団は、経済的実益も少なく、従業員の安全保障もない。企業は人員を全員撤退させるべき」と主張した。
|
8日、開城から引き揚げる韓国企業の車 |
開城工団に入居する企業は123社。全社が2011年に挙げた営業利益は68億8000万ウォンだが、同期間に北韓に入金された賃金は1000億ウォンに達した。
2兆3600億ウォンあまりの設備投資が行われた工業団地である上、政府が個々の入居企業に支援を行っていることを考慮すれば、経済的生産性は低いといわざるをえない。南北協力の効果も未知数といえるだろう。
韓国軍は開城工団にとどまっている韓国人職員が人質にとらえられた場合の救出作戦計画を立ててあると発表しているが、現実的な策はないというのが大半の意見だ。北韓軍の要衝地である開城に兵士を派遣して数百人もの人質を無事帰還させられるという保証はどこにもないということだ。
韓国企業の労働者は、平時で800人前後が開城にいた。3日以降は徐々に減り、9日の時点で韓国人労働者約400人が公団に滞在している。
一方、開城工団を維持せよと訴える人たちも少なくない。苦労して誕生させた南北共同の工業団地の象徴性を重んじ、今後の統一に備えた民族共同体の前哨基地として維持すべきという主張である。
北韓大学院大学の梁茂進教授は「南北双方にとって好都合な事業として設立されて以来、人と材料は数十万件往来し、年間生産は金額ベースで3~4億ドルに達している」と強調。「民族共同体に向けた基本的な経済協力の現場であり、国際的にも南北が平和地帯をなしたということを周知できるなど、金では計算することができない有形無形の価値が大きい」と述べた。
開城工団への入境制限措置が1週間以上続いた場合、実質的に機能不全状態になる。123社の入居企業の60%が衣料品、縫製、繊維会社であり、材料供給がなければ、操業を停止せざるをえないからだ。
開城工業団地は04年に生産を開始。初期の北韓の労働者数は6000人台だったのが、現在は5万4000人に達している。しかし北韓当局は8日、開城で働く北韓の労働者全員に撤退を指示し、工団の閉鎖を示唆した。
(ソウル=李民晧)