【在特会問題】「民団だからこそできる役割を」

編集委員 権清志
日付: 2013年03月27日 00時00分

 「在日特権を許さない市民の会」こと「在特会」。7年前に結成されネット上で公称1万2000人の会員数を誇る「市民運動体」である。彼らのヘイトスピーチが常軌を逸してきている。
 3月14日に国会内で開催された抗議集会を機に日本大手の新聞社や各国放送局等に取り上げられ関心を呼んでいる。
 京都朝鮮初級学校「抗議」事件(民事で係争中)や徳島県教組業務妨害事件(有罪判決済み)のみならず、広島での原爆慰霊の日に被爆者を侮辱したり、同会幹部が水平社博物館にて部落差別言辞を吐いたりして唾棄すべき行動に及ぶなど枚挙にいとまがない。
 その主張は事実誤認と悪意に満ち偏見予断に基づく荒唐無稽なものである。地方参政権を求める集会への妨害行為のみならず主催する民団幹部の自宅まで執拗に押し掛けて醜い罵声を投げつけている。ネット上で自らが撮影した動画を載せるなどして自らを「行動する保守」と標榜している。
 先の集会では新右翼の「一水会」幹部曰く「彼等は右翼ではない」「弱い者いじめの差別集団」と喝破されている。放置されてきた彼らの言動が昨今、黙過できないレベルになり、それは「表現の自由」の範囲をはるかに逸脱している。これらのヘイトスピーチが言葉の暴力として同胞をどれほどに傷付けてきたか。
 ネット上で垂れ流しにされる言辞もさることながら、直接攻撃を受けた京都朝鮮学校の児童や父兄、新大久保で生計を立てている新規在住同胞の味わった悔しさ、恐怖感は察して余りある。 
 解放後からの生活史の中で差別・偏見と闘ってきた同胞にとっては関東大震災の悪夢が想起され、まさに心を抉り取られるかのような苦痛を強いられる。そして新規在住の同胞は異国の地での理不尽な攻撃にただ戸惑い呆然とするのみだ。
 先の集会で有田芳生議員が「ドイツの戦闘的民主主義」を目指すことを宣言した。市井の日本の若者はカウンター行動として商店街を闊歩する嫌がらせを封鎖する「レイシストしばき隊」や沿道で反レイシズムをアピールする「プラカード隊」を組織化する。
 17日の新大久保、24日の大阪のデモでは在特会のデモ隊を凌駕する数の市民が集まり、彼らの差別的言辞を数度も打ち消す場面を現出した。まさに日本人自身が自らの問題として捉え行動した瞬間である。
 他方、一方の当事者である在日同胞も具体的な動きを取る。一人の在日同胞の呼びかけでデモの許可を司る公安委員会宛ての街頭、並びにネット署名運動が急速な広がりを見せている。
 民団も「街宣右翼やネット右翼などの口汚い罵りは放っておけばいい」(民団新聞2013年3月6日付社説)とした態度からの転換を求められている。特に新大久保の新規在住同胞の法的地位が弱いこと、差別と闘い得る強固な組織体を持ち得ないこと、異国で暮らす上での経験が浅いことなどを勘案すれば民団の果たす役割は大きい。
 昨年来のデモにより客足が落ち生活自体を脅かされている新規在住同胞にとっても民団との距離感をなくす好機だ。「不退転の決意で闘ってきた歴史」(同社説)を持つ民団だからこそ、そして「生活者団体」を標榜する民団だからこそ、今まさに具体的な行動が問われている。


閉じる