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会談する盧武鉉と金正日 |
金正日と会って帰ってきた盧武鉉は、NLLの性格を変えようと努める。彼は07年11月1日、次のような発言をした。朝鮮日報を引用する。
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盧武鉉大統領は、NLL(西海北方限界線)を護らねばならないという国内一部の主張を、子供の頃の「陣取り遊び」にたとえながら、利害関係がからむ実質の問題ではなく、情緒上の問題であるだけだという趣旨で話した。盧大統領は1日の民主平和統一諮問会議の常任委員に向けた演説で、「絵までちゃんと入れて合意の判子を押してしまうべきだったのに、もう少し北側へ押しあげよう、南に降りていくなどと揉めている」と言い、「実質的にはほぼ何の利害関係もない問題をめぐって、子供の頃の陣取り遊びのようなことをやっているのと同じだ」と語った。
盧大統領は「幼い時、教室で机の真ん中に線を引いて、『刀を持って中間線を越えてきたら刺すぞ』といったが、それと似たような戦いを今やっている」と述べた。盧大統領は続いて「線を引き直しても、わが韓国に何か大変なことが起き、すぐに安保が危うくなるわけではないが、わが国民の北への情緒がまだ譲歩を容認できないということだ」と述べ、今回の南北首脳会談では、西海平和地帯設置ということで間接的に解決したと述べた。
盧大統領は、NLLが、▲合意されていない線であり、▲国際法上の領土線画定基準に合わないという北側の主張に対して「それは事実」としながら、「しかし、私が勝手に線を引いたら、おそらく板門店などで『左派、親北大統領盧武鉉は帰ってくるな、北韓に住め!』という横断幕がかかっていたのではないか」と述べた。
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盧武鉉はこの演説を通じて自分が金正日に約束したことを公開してしまったわけだ。つまり、「NLLは絶対に守るという理由がないもの」、「領土線でないという北韓の主張が正しい」、「NLLの性格を迂回しながら変質させよう」などといったことだ。
北韓は、10・4宣言の後続措置として行われた南北国防長官会談で、「共同漁労水域」をNLLの南に設定する案(明らかに領海侵犯)を出し、韓国はNLLを中心に南北等距離に設定する案を出した。しかし北韓はこれを受け入れず、盧大統領も金章洙国防長官を抑えきれなかった。結局大統領選挙で李明博候補の当選が確実になり、世論やメディアがNLL放棄に反対したことで、盧武鉉の案は推進力を失った。
李在禎統一部長官は、盧武鉉・金正日会談直後の07年10月17日、国政監査で李華泳議員と次のような質疑応答を交わした。
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李華泳 西海の平和協力特別地帯に共同漁労水域を設けることになっていませんか? そうなるとNLLを基準にして等距離・等面積である可能性が非常に高いですよね?
李在禎 まだこの問題は議論していませんが、さっきお話がちょっと出ましたが、南北関係は必ず相互主義という原則の下で等距離・等面積の原則を定めて議論するということは、私は適切でないと判断します。
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NLLという軍事境界線を放棄して共同漁労水域にすることだけでも問題なのに、等距離・等面積の原則にもこだわる必要がないというのは、事実上NLLの性格を本質的に変更するという内心を示したものと見るべきだ。盧・金会談録に盛り込まれているNLL関連の発言が推察できるやりとりである。