4時間ほど続いた盧武鉉と金正日会談で主な発言者は盧大統領だった。会談録の約3分の2が彼の発言だったという。
国家情報院は保存されている会談録の公開を拒否。セヌリ党は民主党に与野党共同で閲覧するように迫ったが、民主党は応じなかった。
右派団体は、李明博大統領がこの文書を公開しないのは“逆賊謀議"に同調する行為だと主張する。文書を読んだ人々はほぼ「保護すべき国家機密はない」と話しており、「国民に真実を知らせ、南北の間でこういうことが(二度と)起きないようにし、北が次期政権に盧・金の密約を根拠に無理な要求をするのを遮断する必要がある」という見解だった。
国家情報院以外に発言内容を読んだ最初の人物は李明博大統領で、08年末から09年初めの間だった。彼は要約ではなく、100ページを超える会談記録すべてを国家情報院から持ってきて読んだ。執務室で読み、私邸にも持って帰って読んだそうだ。安保参謀もこの時期に会談録を読んだ。
当時は北韓軍の金剛山観光客射殺事件により南北対話が断絶されていた。北は李明博政権に対話の可能性を打診しながら「10・4宣言」の履行を執拗に要求した。大統領は盧武鉉・金正日会談で何があったのかが知りたくて対話録を持ってくるよう指示したという。
李大統領は会談記録を読んで驚愕したという。参謀たちに「あまりにも恥ずかしい。これほどなら国民に知らせるべきではないか」と問いかけた。複数の関係者が打ち明けた読後感は、「盧武鉉は先生に報告する学生のようだった」、「盧大統領があまりにも屈辱的だったため、到底全部読み通せないほどだった」、「大韓民国の大統領が反国家団体の首魁である金正日に褒められようと努める様子だった」、「盧大統領の話は取り留めがなく、金正日の方がむしろ慎重だった」、「盧武鉉は(韓国の)国益を献上しようと努め、金正日がむしろ止める側だった。ほとんど売国奴のレベルだった」などである。
盧・金対話録を読んだ青瓦台関係者らは、北が10・4宣言の履行を執拗に要求する最大の理由が、盧武鉉が金正日にNLLを事実上無力化する約束をしたためであることが分かったという。盧武鉉は口癖になった「NLLは、米軍が陣取りのために引いた線」という表現を使いながら、「共同漁労水域を作ろう」と提案した(鄭文憲議員の暴露内容とほぼ一致)。
盧武鉉は「南韓にはいまだ、NLLを領土線だと主張する人々がいるが…」という言い方で、「安保地図としてのNLLの代わりに経済地図を描こう」という旨の話もしたという。
盧武鉉は、NLL守護の意志がないことを確実にした上で話を続けた。金正日は、全部聞き終わってから、「それでは(NLL)法を廃棄しなさい」と命令調で話した。
2012年9月29日、北韓のいわゆる国防委員会政策局の代弁人が明らかにした以下の内容が、盧・金対話録の要旨を正確に伝えたものだ。
「10・4宣言に明記された朝鮮西海での共同漁労と平和水域の設定問題は、徹頭徹尾北方限界線自体の不法・無法性を前提とした北南合意措置の一つである。北方限界線の尊重を前提に、10・4宣言で合意した問題を議論するといった朴槿恵という女の発言や、ほかの傀儡当局者らの北方限界線固守という主張は、そのいずれも例外なく、北南共同合意の経緯や内容も知らない無知な表現である」
NLLという「線」をめぐっても頻繁に衝突が起きるのに、共同漁労水域という「面」がNLLの代替として設定されたら、管理はより複雑になり、恒久的な紛争水域になるのは当然だ。
北韓は漁船も武装しているが、北が南の検問に応じず南北の船舶が入り交じって衝突が増えれば、結局は首都圏防衛の生命線であるNLLは有名無実化する。実際韓国政府は05年から北韓船舶の釜山―済州海峡の通過を許可したが、彼らは韓国側の検問要求を随時無視している。