東海に渦巻くもの=瞻星台―編集余話

日付: 2012年12月05日 00時00分

 今年の冬は、当初の予想に反して厳しい寒さになるといわれている。東京もこの週末、寒い日が続いた。ソウルはもっと寒いという。北韓はさらに厳しい冬を迎えているに違いない▼先月末から今月頭にかけて、新潟県で北韓の漁船と見られる船が2隻漂着した。最初の船からは5人の遺体が、2番目の船からは1人の遺体が発見された。一報を聞いて脱北者かと思ったが、どうやら違うらしい。遺体はいずれも成人男性のもので、遭難した漁民ではないかと見られている▼6遺体はいずれも死後2週間から1カ月以上経過しているとのことだった。漁に出た頃に11月初頭の「爆弾低気圧」に襲われたのか、見るからに外洋で操業するのは難しそうな漁船ではひとたまりもなかっただろう。寒く強烈な海風に吹かれ、波間を漂ううちに力尽きていった彼らは、どれだけの恐怖と絶望感を味わったことだろうか▼東海(日本海)沿岸には、過去に何度か脱北者が漂着している。最近では11年9月に能登半島沖で見つかった脱北者9人のケースが記憶に新しい。彼らは韓国行きを希望していたのだが、特に冬場は北西の風が吹く日が多く、意図せぬ風に押し流され、日本までたどり着いたのだろう▼一方で、90年10月に起きた美浜事件(福井県)に代表されるように、北韓の工作船が侵入する事件も起きている。闇に乗じて、強い海風に吹かれ、今日も東海のどこかを北韓の船が漂っている。生活の糧を求めて、自由を求めて、あるいは暗い意図を持って…。冬の東海にはさまざまな感情が渦巻いている。


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