問われる大統領選挙権行使と組織

日付: 2012年11月07日 00時00分

 海外居住の韓国国民が初めて参加可能となった大統領選挙の選挙人登録が終わった。日本地域の選挙人登録数は、3万7000人を超えた。今まで目標5万人を公言してきた民団関係者にとっては、満足のいく結果とはいえまい。
 しかし4月の総選挙の時と比べると、予想以上の数字ではあった。当初中央選挙管理委員会が懸念したとおり、登録制度そのものに不備があったことや、民団や諸団体の現状を考えれば健闘ともいえるだろう。
 問題は、選挙人登録後、つまり今後の対応だ。登録者をいかに選挙に参加させるかが最も重要になってくるのだが、残念ながら今のところ関係者に妙案はないように見える。
 選挙人登録もそうだが、投票が在日韓国人にとってどのような意味を持つのか。有権者一人ひとりに浸透しているとは思えない。民団の基礎組織である支部においても、各々差があるのは事実だ。
 選挙の宣伝・啓蒙活動は、それほど活発に展開されているわけではない。小規模でもきめ細かな説明会を展開する“宣伝マン"が足りていないのが決定的な問題だ。
 もちろん初めての選挙であるため、選挙管理法に触れる可能性があって動きが慎重にならざるをえないのは理解できる。その障壁を取り払うリーダーシップもないのが嘆かわしい。在日韓国人としての権利が拡充されたことは画期的だが、それにともなう組織の体力と個々人の認識が足りていないのが問題だ。
 ではなぜこのような現象が生まれたのか。関係者は真剣に総括すべきだ。さもないと今後の組織運営はもっと難しくなることが予想される。
自負すべき尊い歴史
 民団に限って言うならば、大韓民国の誕生とともに歩んできた尊い歴史があることを自負すべきだ。
 李承晩・初代大統領が打ち出した(1)国民主権、(2)自由民主主義、(3)世界平和志向、(4)グローバル化と自由貿易を通じてかつての王制国家へ回帰するのではなく、民主共和制を選択したことは、何よりも正しい選択として確信できるだろう。この大韓民国が歩んできた道を、なぜ民団は堂々と打ち出そうとしないのか。韓国の近代化を実現し、今日の韓国の基礎を作った朴正熙元大統領に対する正しい評価さえ打ち消そうとする動きがあることも注視すべきだ。
 相変わらず「従北勢力」の動きも活発だ。古今東西を問わず、「北」の体制が人類社会や我が民族、そして大韓民国の発展にとってプラスになることがあるだろうか。
 在日同胞社会の歴史を見ると、本国がおかしな方向に行きそうなときは忌憚なく問題提起をし、是正を求めてきた。
 70年代に朝総連による民団乗っ取り事件(金炳植・総連第一副議長の事件など)や06年5月17日の民団・総連野合事件に微力ながらも主体的に参加した本紙の立場から見れば、今日の民団が行っている諸般の活動は、生ぬるいとしか言い様がない。
民団に求められる改革方法
 今の民団は官僚化しているといわれる。本来の意味での専従活動家が少なくなり、それが弱体化につながったとも指摘されている。団長が変わっても業務に支障が出ないという意味での官僚的システム構築はいいのだが、「就職先」として支部に入る職員には、率先して動く奉仕の精神が消えかけている。
 選挙参加は、我々にようやく与えられた権利として行使すべきである。それを促すのは、在日韓国人最大の団体である民団をおいてほかにない。
 ただし、本国の政党政治そのものが日本の韓国人社会に持ち込まれるリスクには気をつけなければならない。権利を行使することと、政治に踊らされることとは違う。ましてや多様化する同胞社会において、民団の舵取りはますます複雑になる。誤解を恐れずに言うならば、民団の運営には、今後ますます困難がともなうことになるだろう。
 民団が誇りある歴史への認識を持ち、今後の諸般の事情に対応することを切に望む。


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