李春根
去る4月13日北韓が人工衛星だと強弁しながら発射した長距離ミサイルはわずか2分程度飛んで爆発した。これ以上恥じることもない北韓側は4月15日金日成誕生100年を迎えて大規模軍事パレードを行って軍事力を誇示しようとした。4月15日のパレードで最も強力な武器のように見えた長距離ミサイルが金正恩の査閲台の前を通る時金正恩はそばの将軍に訊いた。
東亜日報は、金正恩の口の形を見て金正恩がその将軍に‘あのミサイルは発射したことがあるのか’と訊いたと推測した。これに憤怒した北側は東亜日報社をはじめ韓国の報道機関4社を爆破すると脅した。色塗りも粗悪で普通の人々の目にもちょっと変に見えたその大型ミサイルは、写真を精密分析した西側の専門家たちによって紙で作ったにせ物と判明された。
国際連合は北側の今回のミサイル発射を糾弾して2009年採択された国連決議案よりも強化された議長声明を速かに採択し、オバマ米国大統領は北韓が変わる時まで孤立させると言った。
いつも北韓の肩を持った中国すら北韓の挑発に怒った。中国が怒った理由は、北側の挑発が次第に中国にも深刻な被害をもたらすことを自覚したためだ。特に北韓が南に向けたミサイル挑発は、米国、日本、韓国、台湾の軍艦が中国の沖合いに集結する結果を招き、北の行動が南支那海全体を自分の海だと考えている中国の戦略に深刻な危害要因になったためだ。
にも拘らず、北韓は第3次核実験を準備し、国語辞典でも探せないあらゆる汚い最悪の悪口を動員して大韓民国を罵っている。以前朴正煕大統領が言った通り狂犬には棒が薬だ。
北韓は、大韓民国を3-4分間で台無しにさせるという背筋の寒くなる脅迫をし、これは物理的に可能だ。北の長射程砲や短距離ロケットは3-4分内に首都圏を打撃できる能力を持っているのが現実であるからだ。
ところで、そういう北韓の威嚇が戦略的に可能になるよう放置してはならない。すでに国際政治学者たちや戦略理論家は物理的に可能な敵国の挑発を戦略的には可能でなくする方法を考え出した。
北韓の脅迫に対処する最良の方法は、北韓が挑発する場合、北韓は韓国よりはるかに凄絶な被害を被ることを事前に確信させることだ。これがまさに戦争抑止理論(deterrence theory)が言う方法だ。
戦争や挑発への抑止が成功的に行なわれるためには二つの前提条件が必要だ。まずは敵も理性的(rational)に考える実体であるということで、二番目は敵に対するわれわれの威嚇が信憑性のあるものでなければならないということだ。今の北韓は果たして理性的な実体であろうか?
北韓はひたすら政権の生存と政権の正統性確立にばかりこだわっている国だ。国民の中で餓死者が続出しているのに、政権の正統性確立のための金日成誕生100年を祝うショーに国民が1年間食べられる米購入費を費やせる国であり、偽物のミサイルまで軍事パレードに動員する国だ。正常な思考をする人々の眼には北韓は気狂いの国だ。ところが、もし北韓政権が本当に理性的な政権でないなら抑止理論が提示する方法で北韓の行動をどう阻止できるだろうか?
理論的には非理性的な人間を抑止できる方法もなく、彼らの行動を予測する方法もない。テロリストを気狂いと見なす米国は、先制攻撃で事前にテロリストを除去する政策を使うしかなかった。
‘私たちは死を愛する’と宣言したオサマ・ビンラディン一派を気狂いと看做さざるを得なかったはずだ。米国は北韓に対しても同じ戦略を取り始めた。北韓住民や北韓の軍事力でなく北韓政権が米国の標的になって久しい。
北韓政権は一つの点では極度に合理的だ。その一つはまさにどんなことがあっても政権は生き残らねばならないということだ。国民が飢えて死んでも自分たちさえ生きれば良いという彼らなりの合理性を持っているのが北韓政権だ。だから、大韓民国の抑止戦略の標的は北韓政権に合わせれば良いのだ。
3分以内に大韓民国を殺してしまうという北韓の脅迫は‘その場合、北韓政権も直ちに終わる’という言葉で返せば良い。大韓民国が北韓に比べて戦略的に有利な点は、北韓が大韓民国を殺すことより大韓民国が北韓政権を除去することがはるかに容易で簡単だという点だ。
だが、大韓民国の断固たる決心を北韓政権が信じなければこういう戦略は効かなくなる。
北韓政権に彼らの挑発は北韓政権の終末を意味すると確かに信じさせねばならない。そのためには物理的条件と心理的条件の二つが必要だ。物理的条件とは精密打撃武器の保有の有無だ。大韓民国国防部は、すでに金正恩の執務室の窓も狙えるほどの独自開発の精密打撃武器を保有していると発表した。
もっと重要なことは、状況が勃発した時、生死の決断が下せる勇気と覚悟だ。英国の著名な戦争理論家のマイケル・ハワードは‘戦争という手段は悪であるしかない。しかし、戦争という手段を放棄した者は自分の運命が戦争を放棄していない者の手中にあるという事実をすぐ発見するようになる筈だ’と話している。
永い間、大韓民国と北韓の関係がそうだった。戦争という手段を国家政策の手段としては事実上放棄していた大韓民国の運命は、その間全面的に北韓側の慈悲心にかかっていた。
北韓が恫喝するたびに南韓は慌てふためいた。国力が北韓よりはるかに強くなった以後も韓国は平和を乞うために北韓に阿附した時もあった。そういう時期にも北韓は彼らが必要な時ごとに対南挑発を恣行した。‘太陽政策’の時を平和な時代だったと信じる人々は、北韓の対南挑発の歴史を綿密に見て見ろ。‘太陽政策’の時の韓半島が果たして平和な時期だったのかを。
もう非正常的だった南北関係は正常に戻らねばならない。韓半島の戦争と平和が北韓政権の勝手で決まる時代は終息せねばならない。国を象徴する漢字の通り国とは、国民(口)たちが戈を持って護る大きな地だ。北韓よりはるかに良い戈(槍)を持っている大韓民国が何を恐れるのか。
この文は未来韓国2012年5月第1号の李春根博士の戦略物語に掲載されたもの。