金環日食の影絵=編集余話 瞻星台

日付: 2012年05月23日 00時00分

 東京でも薄曇りの雲の切れ間から21日午前7時34分頃、金環日食が見えた。マジックを塗ったクリアファイル越しに太陽と月と自分が一直線になる感覚に浸れた。月が太陽の右上から入り、左下に出て行く。金環ができる直前とできた直後、リングの左下と右上に月がはめたまばゆいダイヤモンドのような輝きも2度観察できた。今回のように金環日食が広範囲で見られるのは932年ぶりという▼日食を見た一番古い記憶はざっと50年前。すすを塗ったガラス板で日食を見た。下校途中に空が暗くなり、地面には三日月形の木漏れ日がチラチラ影を落としていた。今回は薄曇りなので観測できなかったが、日差しが強ければ金環状の木漏れ日を見ることができたのではなかったか▼日食で面白いのは連想豊かな神話や伝承だ。北欧の伝承では狼が太陽を常に追いかけており、狼が太陽に追いつくと日食になるという。太陽神アマテラスが八百万の神々を残して隠れてしまった天の岩戸伝説には日食を擬人化したという説がある▼韓半島では太陽には3本足のカラス、セバルカマギが棲むという。高句麗の壁画に登場する天界の使者だ。この鳥は日本では神武東征の道案内役をした八咫烏で、3本足のカラスは古代東アジア共通の伝説の鳥だ▼ところで、月にはウサギとともにヒキガエルが棲むという。狼の故事にちなめば日食はヒキガエルが八咫烏を食べてしまうというストーリーにもなりそうだが、金環食は太陽が月を呑み込んでしまったようにも見えるから、両者の勝負は5分5分だろう。


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