広辞苑で「無邪気」と引くと第2義に「深い考えのないこと。考えの単純なこと」との説明が出てくる。15日の金日成生誕100年を記念して行われた軍事パレードを参観した金正恩の表情は、まさに無邪気だった。その振る舞いは軽佻浮薄けいちょうふはく(軽はずみでうわついていて落ち着きのないさま)という表現がぴったりだろう。パレード前のスピーチでは金日成に似せるように体を揺らしていたが、演技以上に緊張の色が濃く出ているように見受けられた▼彼に北韓の非合法政府を預けるため道を整えた金正日は、今頃地の底で頭を抱えているのではないだろうか。まさかあのような醜態を国際社会に見せつけることになろうとは、「永遠の総書記」に推戴された喜びなど吹き飛んでしまったに違いない▼韓国は今まで以上に気を引き締めなければならないだろう。外交や駆け引きに手慣れた実務陣がサポートしているとはいえ、金正恩と軍幹部とのつながりは強そうだ。視察も軍の部隊を中心にしていると聞く。彼らが強硬策を主張したとき、それを止める力が金正恩にあるとは思えない▼最大の害を被っているのはほかでもなく北韓住民だろう。一説では4月に入ってからのミサイル発射やパレードなどの祝賀行事で、1年の予算の3分の1が消えたともいわれる。飢えに苦しみ中国に逃げ込む住民が続出する中でこのような浪費を続けていれば、今以上に国際社会との関係や財政は苦しくなる▼祝砲になるはずのミサイル発射は失敗した。これが金王朝の「弔砲」となり、住民解放の「号砲」となることを願ってやまない。