李春根
金正日が死んで2ヶ月が経った。しかし、北のわが同胞はまだ希望のない寒い冬を送っている。世界多くの国の人々は北韓住民が飢えて死んでもまた暴圧的独裁に苦しんでもあまり関心がない。彼らの暮らしに精一杯であるためだ。
しかし、大韓民国が北韓住民たちに無関心だというのは話にならない。にも拘らず、また政治の季節が近づいた2012年の2月、大韓民国の政治家たちの中で北韓人権を語り北韓住民の悲劇を心配し統一強大国の大韓民国を作ろうと語る人はごく少数に過ぎない。
米国のタイム(TIME)誌は金正日が死ぬ10ヶ月前に北韓住民の唯一の希望は金正日の死だろうと主張したが、金正日が死んだ直後世界各国が北韓政権の安定を望むだのという概念のないことを言っていた今年の1月初め、英国のエコノミスト誌(The Economist)は今や北韓の権力を交替するため議論すべき時だと主張し、金正恩の交替を議論することは韓半島と東北アジアの安定と平和のためであり、ボロを着て飢えている北韓住民たちのためだと主張した。
北韓という人類歴史上最悪の政治体制が今方向を失って迷っている状況だが、自ら崩壊することを待っている訳にはいかない。軍隊や平壌の少数の特権階層だけに与えられることに決まっている食糧や物資援助を人道主義という名で再開してもならない。南韓の一角で主張される(南北)首脳会談云々は言語道断だ。「首脳会談」とは、大韓民国が進んで金正恩を北韓の正当な継承者と認定することも同然であるからだ。「首脳会談」をやれば、北韓側は70才を超えた韓国大統領が28才の金正恩を謁見すると宣伝するはずだ。
では、今大韓民国がやらねばならないことは何か? まず、北へ言うべきことを言うことだ。北韓政権が改革開放を通じて国民を自力で食べさせなければならないと促し、(北の)国力にそぐわない肥大化した軍事力を縮小し核兵器を放棄して活路を見出だせと忠告せねばならない。国民を食べさせられる最も確実でかつ検証された方法を教えることがなぜそんなに難しいのか? 北韓政権が北韓住民を生かすために努力せず、核ミサイルを開発し続け軍事だけを強調するなら、大韓民国と世界は北韓の変化のために介入せざるを得ない。エコノミスト誌がすでに指摘した通り、世界は北韓の変化、つまりレジームチェンジ(Regime Change)に乗り出さねばならない。
歴史上最も輝かしいレジームチェンジの成功事例は、レーガン大統領によるソ連の崩壊であろう。ソ連が倒れる数年前にモスクワを訪問したアーサー・シュレジンジャー教授は、「店には物も多く、食料品店にも食べ物が多く、街には自動車も増えている。どうしたことかは分からないが、キャビアの他にはあらゆるものが豊富になりつつある」と言った。ソ連市民がみな暮らしが良くなってキャビアを食べられる人が増えたという話をそのように言ったのだろう。ノーベル経済学賞に輝くポール・サムエルソン教授は、「ソ連は何の問題のない国だ。ソ連が直ぐにも崩れると信じるのは浅薄な誤り」と言い、ソ連がまもなく崩壊すると思っていたレーガン大統領と彼の参謀たちを叱った。彼らのような「優秀な」人々の目にはレーガン大統領はまぬけな人間に映ったかも知れない。
レーガン大統領は1982年の初め、ソ連の本質的に虚弱な政治・経済体制を攻撃する戦略を樹立した。レーガンの対ソ戦略は経済戦争を含む包括的なものだった。極秘文書を通じてこの攻撃戦略の目標と手段らが具体化された。レーガン大統領がサインした国家安保決定指針(National Security Decision Directives, NSDD)は、ソ連を崩壊させる作戦計画だった。
1982年3月、レーガン大統領が署名したNSDD-32は、ソ連の東欧支配を無力化させることと、このために東ヨーロッパ諸国の中の反ソ組織らを支援する秘密作戦と、諸般の手段を使用するよう許諾する措置だった。1982年11月、レーガン大統領が署名したNSDD-66は、「米国の政策は、ソ連が生存するために決定的な三つの要素を攻撃することでソ連の経済を破綻させること」と宣言した。1983年1月、レーガン大統領は自身が主導したNSDD-77(*右写真)を通じて、「米国はソ連と単純に共存しない。米国はソ連を根本的に変化させる」ことを闡明した。以上の措置らは全世界的に拡散していたソ連の共産帝国主義の権力をコーナーに追込んだだけでなく、ソ連との経済戦争や資源戦争を開始する攻撃的な政策だった。米国は、ソ連体制の本質的な欠陥のためにすでに惹起されていたソ連の弱点を最大限活用した。
この米国の対ソ戦略は、もちろん外交でなく作戦・工作(operation)であり、当然米国CIAがこの作戦の主役だった。ソ連権力の本質的属性を知り尽くしていたウィリアム・ケイシーCIA局長は、レーガン大統領から強大な権限が与えられて世界を縦横無尽駆け回ってソ連という大帝国を解体させることに成功した。
もちろん、米国はソ連に公開的な挑戦状も突き付けた。ソ連の軍事力が米国をはるかに圧倒していた状況では軍縮は不可能だと判断した米国は、米国の技術的優位を積極的に活用する強力な軍備増強を宣言した。米国に飛んでくるソ連のミサイルを宇宙空間で迎撃してしまうという発想を提示した。よく「Star Wars」と呼ばれる米国の宇宙防衛計画(*左写真は同戦略構想を発表するレーガン大統領)がまさにそれだ。米国の識者らはレーガン大統領を戦争狂と非難しソ連との軍縮を主張したが、レーガンは米国が軍事力で強くなってこそはじめてソ連は米国の軍縮提案を受容れるという事実を知っていた。レーガンは、米国の軍事力がソ連より優れてこそソ連が米国の軍縮提案を受容れるのではないかという常識を以って偉そうな顔をする人々に応じた。
金大中大統領は「太陽政策」がまさに「銃弾一発撃たずソ連を倒した」レーガンの政策と同じものだと主張した。北韓の機嫌を取るために北韓を非難もできずお金と食糧を差し上げた「太陽政策」が、ソ連との軍備競争を公開的に展開し、ソ連を崩壊させすべき悪の帝国だと公開的に宣言したレーガンの対ソ政策と同じものだったらどれほど良かっただろう!
左翼政権の「太陽政策」は、誰もが同意していた「虚弱な北韓」を20年以上延命させるのに寄与し、レーガンの対ソ政策は、偉く威張っていた学者たちによって「強大な国」と評価されていたソ連を攻撃開始わずか8年で、本当に銃弾一発撃たず崩壊させることができた。金正日死後の北韓に対してどんな政策を駆使すべきだろうか? 今こそレーガン大統領の対ソ政策をもう一度吟味すべき時だ。
この文は「未来韓国2012年2月」の李春根博士の戦略話に掲載された。