李春根
全ての国々は国力の増進のために努力する。国力の増進とは経済力の拡大を意味し、経済力が大きくなった国は引き続き軍事力も増強させる。これは数千年間持続されてきた国際政治の法則でありこの法則が変わりそうな兆しは見られない。経済が急速に発展した国々は護るべきものが増えたという事実を口実に軍事力の増強に走る。既存の強大国らは新しく登場する強大国を牽制しようとし、そういう時ごとに国際情勢は不安と緊張の時代に入った。結局、特定強大国の急速な経済力増強は、当代の国際政治構造に不安定をもたらし、最悪の場合、大規模の戦争も勃発した。
ツキディデスは、「急速に増強するアテネの国力の増加をただ見守るわけには行かなかったスパルタの恐れ」でペロポネソス戦争を説明する。20世紀初のドイツの急速な国力増強は第1-2次世界大戦の原因になり、20世紀中盤のソ連の急速な力の増強は米ソ冷戦の原因だった。人類が絶滅するかも知れないという切迫した恐怖感のために米ソの覇権競争は熱戦(hot war)に飛び火せず冷戦(Cold War)で終わることができた。戦争による物理的破壊はなかったものの、ソ連は戦争敗北ほどの国家および体制崩壊の苦い味を味わった。
21世紀の国際体制は再び二つの強大国が覇権競争を争う様子を露呈している。1978年改革開放に転換した後年平均9-10%の驚異的な経済成長を持続した中国は、2010年日本を追い抜いて世界2位の経済大国になった。中国は、急速な経済力増強が中国にもたらすかも知れない脅威をすでに意識したため「和平崛起」(平和裏に立つ)、韜光養晦(光を隠して闇の中で力を育てる)などの一種の外交的偽装を使わざるを得なかった。ところが、国際政治は本質上「和平崛起」や「韜光養晦」が不可能な領域だ。
1990年代以後中国の軍事力増強の速度は、経済力増強速度をはるかに上回るもので、国防費基準年平均15%以上の増加が続いた。中国は護るべきものが増えただけでなく、持続的な経済発展のために軍事力、特に海と海路が護れる海軍力が絶対的に必要になった。中国は日本列島、沖縄、フィリピン、インドネシアを連結する線を引いてこれを「第1列島線」と命名した後、第1列島線の西側の海である東海(*日本海)、黄海、東シナ海、南支那海の全てを中国の内海のように見なす「反接近、地域拒否」戦略を展開するに至った。
米国は中国のこのような戦略をA2/AD戦略と呼ぶ。Anti Access/Area Denialという中国の戦略は海洋自由の原則を信奉する海洋大国の米国の戦略と衝突せざるを得ない。今まで「中国の経済成長は世界のために良いこと」、「米国と中国は経済的相互依存度が高いため、緊張関係に陥ることはない」と言った理想主義が急激に消滅しつつある。米国は今年1月5日アジアを重視するという新しい国防戦略指針を発表した。
新国防戦略発表の前に、クリントン国務長官は、21世紀の地政学はアジアで決定されるし、米国はその決定の真ん中にいると闡明した。
米国と中国の覇権競争は韓半島周辺の国際秩序を危うくするはずだ。だが、危機は機会とともに来る。米・中の覇権競争は東北アジア秩序の変動をもたらし、これは行き詰まった韓半島に統一の機会を提供できる。われわれは米・中葛藤の中で仲裁者や傍観者になり得るという夢想を棄てて、急速に迫ってくる国際状況を統一へと導ける大戦略を構想しなければならない。
この文は国民日報2012年2月1日付に掲載された文です