李春根(韓国経済研究院外交安保研究室長)
2010年9月に弱冠27才で大将の階級章をもらった金正恩が昨年12月父の金正日が死ぬや直ぐ軍最高指導者のポストに就いた。だが、金正恩が最高司令官に就く過程は何か釈然とせず、これは北韓の未来が非常に不透明である事実を示している。
北韓では金日成時代から最高権力者は軍最高司令官職を兼ねており、同時に最高の軍階級に就いている軍人だった。金日成は韓国戦争中の1953年2月に元帥になり1992年大元帥になった。1992年軍最高司令官に任命された金正日も元帥の称号が与えられた。
自らが認める「金日成朝鮮」
軍を国の最高・最後の柱と崇めている北韓には大将よりもっと高い階級である次帥と元帥がある。現在の北韓軍で最高階級の人は金日成の警護を担当した李乙雪元帥だ。大将より一階級高く元帥よりは一つ低い階級である次帥の階級を持つ軍人は総参謀長・李英浩と人民武力部長・金永春の二人だ。二人を置いたまま大将である金正恩が軍最高司令官に就いたから北韓軍の階級序列はどうなったのか? あまりにも若いためさすが元帥の階級を付与できなかったのか?
2012年を「強盛大国の年」と設定してきた北韓は、この元旦に発表した新年共同社説で「強盛大国」という用語と「強盛国家」という言葉を混用している。いくら誇張法を好む北韓であっても今の状態を「強盛大国」と言うのは不都合だったはずだ。また、「今人民の食べる問題、食糧問題を解決することは強盛国家建設の焦眉の問題だ。今日党組織の戦闘力と働き手の革命性は食糧問題を解決することで検証される」と言わねばならない北韓としては、強盛大国の自任もできなかったはずだ。
全国民のわずか12%程度の住民たけが配給の対象で、残り88%は「ジャンマダン」と呼ばれる地下市長を通じて生きているという北韓はすでに社会主義国家でもない。北韓は国家のごく少数の最高特権層だけが住民の暮らしとは関係なく贅沢に暮らす点で王朝国家だ。驚くべきことに北韓はこういう事実を認めている。「朝鮮民主主義人民共和国」の代わりに「金日成朝鮮」という用語を使っているのだ。
軍隊で10年間も務めねばならない北韓の若者たちが古参兵になる年齢が27才なのに、彼らと同じ年齢で北韓軍大将になった金正恩は自分より階級も高く、歳をとった多くの将軍たちを指揮しなければならない重い課題を抱えている。「金正恩時代を開こう」という北韓の新年共同社説は、死んだ金正日に52回も言及しており、そして死んですでに17年が経った金日成にも22回触れているが、新しい指導者の金正恩の名はわずか16回しか触れていない。金日成を「首領様」と呼び金正日を「将軍様」と呼ぶ北韓は、金正恩には適当な称号すらまだ付けられずにいる。
北を安定させるため支援すべきなのか
金正恩が乗越えなければならない未来は対内外的に簡単でない。北韓住民を食べさせるとても簡単な方案が一つある。改革・開放をやれば済む。だが、改革・開放は「金日成朝鮮」の王族を没落させる毒杯だ。
2012年、歴史の転換点を迎えた大韓民国国民は、「金日成朝鮮」の王族たちと「金日成朝鮮」で苦しんでいる住民たちの中で誰の肩を持つべきか? ところで、金正恩政権の安定と安着を支援すべきだと言っている大韓民国の「国民」は誰の肩を持っているのであろうか?
(*この文は国民日報2012年1月4日付に掲載されたものです。)