2012年は壬辰(みずのえたつ)の年だ。昔から韓民族は、龍を鳳凰、麒麟、亀とともに「霊物」として崇めてきた。その中でも龍は主格だった▼干支の中で唯一空想上の生き物である龍は、しばしば実在の動物より人々の側にいた。貧しい農民が大多数を占めた朝鮮時代、人々は日照りが続き、飲み水さえなくなるほどになると龍に祈った。貧しい家に生まれた志ある青年は、龍を夢に描いた。
「どぶから龍が生まれる」ということわざは、自分自身に言い聞かせる希望の言葉として今も残る。たとえ腰が曲がるまでの一生を苦しみながら生きねばならないような状況でも希望を捨てない民族の粘り強さが感じられる▼龍は絶対的な存在の象徴でもあった。王の象徴として王の顔は「龍顔」、王の服は「龍袍」、王の座る椅子は「龍平床」や「龍床」と呼ばれた。三国統一を成し遂げた第30代新羅王の文武王(626~681年)は、死んでも龍になって国を守ると、慶州海の大王岩に自分の亡骸を埋葬させた。日本の植民地になった時に日本人がいくら天皇崇拝を強要しても韓国人が応じなかったのは、彼らの心の中に「龍でもないのになぜ王を名乗るのか」という抵抗感があったためなのかもしれない▼韓民族にとって龍は、変化と発展の象徴でもある。大蛇や鯉が龍になって昇天するとか、春に地下にもぐった龍が秋に水中から出てくるという話は、龍が持つ変化のイメージから出たものだろう。2012年、韓民族とその構成員が世の荒波や風雨に屈せず、昇天する龍になるように祈ってみよう。