最近の韓国社会を見ていると、まさに無法地帯という印象しか抱けないほど深刻な状況になっている。
8月25日、ソウル市の無償給食導入方法を問う住民投票が行われた。市長の呉世勲(26日に辞任)は、所得下位50%の家庭からの段階的導入を主張した。金銭的余裕のある家庭も無償化の範囲に含めることは福祉の理念に反することと、財源の不足が大きな理由だった。
野党が多数派を占める議会はそれ以前に、無償給食の全面的実施を可決していた。議会は市長が住民投票に判断を委ねると決めた際、選挙ボイコットを呼びかけた。投票が成立するには、有権者の3分の1の票が集まらなければならない。市長は投票が無効になるか、全面無償化賛成派が多数だった場合、職を辞すると宣言して投票日を迎えた。結果は投票率25%強。市長は敗れた。
投票率が伸びなかったのは、野党側のキャンペーンが奏功したからだ。選挙は平日の金曜日に行われた。そのため投票が困難だったという点も挙げられるが、「投票に行く=市長支持」と受け取られる構図ができてしまった。投票に行きたくても周囲の“監視"のため行きづらい雰囲気があった。これをもって「公開投票だ」と批判する声が各所で上がった。
開票が行われていれば、市長に賛成する票が多かっただろうという予想がある。周囲の目を気にせず投票を行った25%の市民と、真の福祉とソウル市のありかたを提示した市長に賞賛の言葉を送りたい。
糾弾されるべきは野党である。彼らは民主主義の根幹を成す公正な選挙をボイコットせよと呼びかけ、「ばらまき型」の福祉充実で国民の歓心を買うという姑息な戦法に出ている。それに対し、与党ハンナラ党はもちろん、李明博政権は軟弱な態度で混乱を助長した。
ソウル市の住民投票に話を戻すと、給食の全面無償化を最初に提案したのが、郭魯〓教育監(教育委員長に相当)だ。その郭教育監は今、不正疑惑の渦中にいる。昨年6月2日の統一地方選挙のソウル市教育監選挙で、同氏と同じく左派陣営から出馬し、その後立候補を辞退した朴明基ソウル教育大学教授(8月26日に逮捕)に2億ウォンを渡していたのだ。
朴教授は2億ウォンを受け取ったことを認めた。それに対し郭教育監は「就任後、選挙と関係なく、苦しい事情を聞いて善意の支援をした」と述べた。あくまでも立候補取り下げの見返りではないとの立場だ。ただし、2億ウォンの出所については明らかにしていない。
郭教育監は就任後、教育の不正腐敗をなくすことを掲げた。その後もことあるごとに、不正撤廃に全力で取り組む姿勢をアピールしてきた。本人は否定しているとはいえ、「善意で」という主張を信じられる人はどれだけいるだろうか。
8月28日に警察から事情聴取を受けた郭教育監は、「常に監視を受けるのは、いわゆる進歩教育監、改革の人物という理由のためだ」と述べた。一部では、呉市長の辞任に対する報復だとの声も上がっている。これは、規制権力に噛み付くことで批判をかわすと同時に論点をすりかえるという、韓国の従北左派が用いる典型的な手法だ。
済州でも従北左派が…
従北左派が現在活動の一大拠点としているのが済州島南部で進められている海軍基地建設反対運動だ。
2日早朝、基地建設現場に700人以上の機動隊が突入し、反対派の接近を防ぐフェンスが設置された。6月20日に反対派が工事の妨害を始めてから74日目のことだ。その間警察や自治体、政府が何をしていたかというと、不法占拠を黙って見ていただけだった。
ソウル市の住民投票も、海軍基地建設の問題も根は同じである。従北勢力の不法な関与と、それを看過する李明博政権の軟弱な態度だ。成立しなかった住民投票に投じられた税金は182億ウォン、建設中断による被害額は140億ウォンになるという。今こそ国民は、従北勢力と政府の双方を厳しく糾弾すべきだ。